H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

2021年の確定申告を終えて

2021年の還付申告を終えた。確定申告の相談コーナーに行ってみたが、コロナ禍でも盛況。30分待って相談、悩みはスッキリした。

今年もおそらく申告通りに還付されると思っている。簡単にその報告を共有する。

(1)申告内容

・配当の総合課税
・有価証券譲渡所得
・医療費控除
・寄付金控除

(2)譲渡所得の計算

昨年の状況はこんな感じだった。判りやすいような例示で書いてみる。ここでは住民税を省略する。

【A証券】特定・源泉あり 損益 +30
【B証券】特定・源泉あり 損益 +20
【C証券】一般口座 損益 +10
【前年度繰越損失】 損益 -15

上の2つに関しては源泉徴収所得税と住民税を納めているが、一般口座の分は未了なので確定申告が必須。また、前年繰越しがあるので、NETすれば所得税が若干戻る形だ。

尚、この例で住民税の還付はどうなるのか。通常であればマイナス15が全てnetされる。でも今回は後述(4)のように住民税用の所得では特定配当・特定譲渡所得を除く事にしたので、+10と-15がnettingされるだけで-5は節税に繋がらないがそこはまあ許容範囲として構わないだろう。 

(3)外国税額控除の限度額オーバー

国税額控除はその直前までの税額(所得税+復興特別所得税2.1%)の一部をある割合で控除してくれるもの。割合とは外国からの所得÷総所得だ。ただ、2021年の所得は圧倒的に国外のモノが多かったため税額の殆どが控除対象になってしまう。しかもそれが外国で納付した税額を超えてしまうレアなケースになった。

それって大丈夫なのか、それとも外国税額が上限になっているのかこれまで使っていた本を読んでもハッキリ書かれていなかったので、念のために確かめてみた。勿論、上限は存在する。ただ、全ての所得に対してその発生源が国内なのか海外なのか明記されていないので、厳密には手間である。幸い私の場合はその曖昧な部分が全て国内所得だと仮定しても外国税額をオーバーしていたので、それ以上の説明は不要だった。

(4)住民税での扱い変更を指定できるようになった

これはありがたい。2020年には、税務署で所得税の確定申告をした後で市区町村の住民税の窓口で「所得税用の所得はこれこれで申告したけど、既に源泉徴収されている分に関して住民税用の所得をゼロにして」って書類をもう1枚書いていた。その手間が今年から無用になっていた。

と言うのも、「確定申告書B」の末尾に「特定配当等・特定株式譲渡所得の全部の申告不要」欄が設けられているためだ。ここに○印を付ける事でわざわざ市区町村の窓口で改めて手続きをする必要が無くなったのだ。

どうしてこんな不思議な制度なのか。それに関しては以前に別の記事で書いたので以下参照。

http://配当税制を整理しておこう - (hatenablog.com)

要は税目ごとに所得額を選べるのだとどこかの法律に書いてあったらしい。それを明文化したのが数年前だと、2018年の日経新聞を読んでいて知ったのだ。最初はホント驚いた。

銘柄紹介:GRAB

以前に「銘柄研究」と銘打って外国株をいくつか取り上げてみたが、GRABに関してはそこまでdeepに書けない。業績などはFTやYahoo等を参照願うとして、本日は軽い紹介レベルの内容になる。

f:id:hassan01:20220306192026p:image

※出典

https://www.google.co.jp/amp/s/www.axion.zone/grab/amp/

3/3に12月期の決算公表を受けて、シンガポールのGRABの株価が大幅に下落した。その率は1日で37%ダウン。日本市場だとストップ高、ストップ安の制度があるのであり得ない下げ幅だがNASDAQでは通用しない。一晩にして37%を失うのは大きな痛手だ。ちょっとこの会社を理解しておこう。

スマホの株価画面>

f:id:hassan01:20220306172913p:image

(1)概要

米国の配車大手UBERと同様の業態だと理解している。と言うか私も東南アジアの旅でGRABのタクシーに乗った事がある。

コロナ禍のため、日本でもUberEatの自転車が飲食店の前に屯して仕事待ちをしている光景が目立つようになった。日本だとこの光景は引っ掛かる。蕎麦屋の出前も珍しくなったが、何より蕎麦屋と彼らでは風体が異なる。ギグワーカーってあまり好ましい居住まいではないと思ってしまうのだ。ただ、東南アジアにおいてはUberEatだろうがGRABだろうが違和感はない。社会のダイナミズムの中にそのまま溶け込んでいるし、自分で利用した時にもpositiveに受け止められた。

GRABが米国NASDAQ市場に上場したのは2021年12月で、2020年も2021年も赤字決算なのもUBERと同等。上場したばかりとは言え、創業期とも言えない。私が利用したのも6年前なので、そろそろ利益が安定的に出せる会社になるといいのだけど。

日本では、ソフトバンクGがGRABに投資している。確かUberの東南アジア展開を止めるようにソフトバンクGが調整していたので、東南アジアにおけるGRABの営業基盤を上手く守ってくれたものと安心していた。配車の他には、決済、融資、保険など金融業務も展開するとか。発展途上国では銀行口座を持っていない人も多いと言うので伸びる業態なのだろうけど、他社との競合でどの程度の業界地位をkeepできているのか不明。

(2)直近の決算

======

同時に発表した21年10~12月期の最終赤字は11億ドルと、前年同期(6億3500万ドルの赤字)より赤字額が増えた。グラブは配車や宅配事業で得た手数料収入から、運転手や利用者に支払った販促費用を差し引いた金額を売上高として計上している。その売上高が1億2200万ドルと、前年同期に比べ44%落ち込んだことが響いた。

(中略)

グラブの東南アジアの配車市場でのシェアは21年に71%、食事宅配も51%に上った。他社を大きく上回るシェアを維持しているが、競争が激しいために高額の販促費用を投じ続けなければならず、利益の確保にはつながっていない。

======

※出典:日経サイト

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM03DEO0T00C22A3000000/

(3)投資理由と株価の適正水準

Uberが上場した後で株価動向が芳しくないのは知っていた。ただ、東南アジアで個別株を分析する力はないし投資信託ETF投資は嫌いなので、まずは少額を打診買いしてみた。赤字続きの会社なので、正直なところ妥当株価がどの程度なのか判らない。とにかく数年単位で放置しておく方針だった。

それがいきなりこんなに堕ちるのか……。これはもう笑うしかない。シンガポール政府系のテマセクが投資したとか、MSCI指数に採用されたとか良いニュースも入って来るのは救い。コロナ禍が終息したら東南アジアを旅行してGRABを肌感覚で確かめてみよう。

ロシアのウクライナ侵攻は経済にどう影響しているか(後半)

本日は後半としてロシア株と周辺の経済状況について俯瞰しておく。前回同様に、直近の日経新聞より引用している。 

(3)ロシア株式

  • ロシア株式市場(3/4付け)

MSCIやFTSEラッセル指数からロシア銘柄を除外するとか。こうした戦争の場合、国を背負っているだけに個別株相場よりも債券相場の方が急落リスク、デフォルト・リスクが高いと考えたのだがどうだろうか。ここはウクライナ侵攻の今後をwatchしていかないと真偽は判らない。もし終戦後にロシア株が急騰する事を考えると、index運用でこうした操作をする事が正しいのか微妙であり、継続性の観点でも除外が正しいとも思えないな。

f:id:hassan01:20220305213441j:image

  • 売買停止措置(3/1付け)

新規買いは投機性が高いので禁止されても困らないが、もし保有している人の立場であれば売却できないのは流動性リスクが顕在化した途端に拘束されたようなもので勘弁して欲しい。

f:id:hassan01:20220305213438j:image

  • ダイワ・ロシア株ファンド

これは大和証券サイトを参照したもの。ロシア株の指標ってどれをwatchすべきなのか全く知らないので、ロシア株ファンドのチャートの参考として検索してみた。f:id:hassan01:20220305213445p:image

(4)国際的なマーケット

  • 資源高(3/4付け)

原油相場が116ドル/バレルなど急騰している。石油株はそれを受けて直接的に上昇している様子ではない。と言うか、原油相場の上昇で既に一息付いている印象だ。

f:id:hassan01:20220305223513j:image

それに対して、他の資源株が動意付いている。BHPは41.5豪ドル(2021年12月末)と46.6豪ドル(2月末)でそこそこの変動ながら十分に高値圏を彷徨っている。鉄鉱石最大手のブラジルVALEは同じく14米ドルから18米ドルへ急騰している。

  • 欧州銀の信用供与にリスク発生(3/3付け)

これは写真を撮り忘れたが、欧州の銀行株に影響が出ているとか。確かオーストリアやイタリアの銀行株下落がグラフで示されていた。

  • 暗号資産(3/1付け)

日本よりも3倍ほど暗号資産に資金が流入している。これは米国が制裁リストに載せている外貨建て資産凍結から上手く逃れられるのだろうか。新聞の図表のタイトルにも「抜け穴が残る恐れも」と書かれている。自分が未経験なのでなんともコメントできない。f:id:hassan01:20220305213449j:image

(5)日本へのimpact

  • 日本の資源プロジェクト(3/2日経サイト)

エクソンとシェルが、それぞれサハリン1(石油)、サハリン2(LNG)から外れる事を発表した。利益impactを考えるだろうけど、欧米企業はそれでも即決できる。それに対して、日本の大手商社4社がどちらかのプロジェクトに関与しており、どのように態度表明していくのだろうか。これも侵攻が短期決着するのなら慎重な検討が吉と出るし、泥沼化すると社会的な評価が気になる。

f:id:hassan01:20220305214317p:image

現在だと世界情勢よりもコロナ対策の評価にdependするだろうから、今回はあまり参考にならないだろう。

f:id:hassan01:20220305213435j:image

 

ロシアのウクライナ侵攻は経済にどう影響しているか(前半)

ウクライナ国内で暮らしている人にとってたまったものではない。勿論その状況に同情するしロシアについて困ったものだと思うが、ここはFPや金融についてのブログなのでそこは一旦脇に置く。日経新聞の見出しを辿りながら、ここ1週間ほどの状況を見ておこう。先ずはロシアの金利と為替レートについて。

(1)ロシアの金利と債券

  • 利上げ(3/1付け)

9.5%くらいきなり20%にupしたとか。20世紀末のタイでもここまで上がっていなかった。これって将にトルコ並みのインフレ状態に陥り兼ねない状況だ。

f:id:hassan01:20220305213143j:image

  • ロシア債券市場(3/4付け)

ロシア国債の組み入れ比率が69~95%にも上る尖ったファンドが販売されていたのか。純資産残高が少ないので被害者は限定されてくるだろうが、営業マンに騙されて買わされた人は悲しい。

f:id:hassan01:20220305220135j:image

 

(2)為替レート比較

追い込まれた状況下での利上げは、通貨下落に直結していく。1998年のロシア危機では80%、2014年のクリミア併合でも48%と破壊的なレベルだ。

f:id:hassan01:20220305213136j:image

  • 他国との長期レート比較(3枚)

為替レートの推移はこの数字だけでは掴み切れない。なので、Googleで長期レートのグラフを確認した。ルーブルの他に、同じBRICsのブラジル、ハイパーインフレを経験したトルコのチャートも併記した。ここ10数年でmax約4.79円/ルーブルから直近では0.93円/ルーブルまで5分の1の水準。10分の1レベルに落ちたトルコよりマシだけど、ブラジルより悲惨な状態だ。

 

f:id:hassan01:20220305213140p:image

f:id:hassan01:20220305213132p:image

f:id:hassan01:20220305213037p:image

2021年の年間損益状況

コロナ禍が始まって暴落した2020年春から2021年3月まで、月次で損益状況をブログで公開してきた。リアルな数字ではなく、あくまでも2020年1~3月の損失(含み損益+実現損益+配当)を-100とした場合の相対的な評価だ。今回もその路線を踏襲して、相対的な指標をベースに記述していく。

【損益level】

2020年は同年1~3月に発生した損失を残り9ケ月間でカバーし切れなくて、-17.9と水面下に沈んだ状態で越年となった。で、ようやく2021年3月時点で+33.8と2019年末時点の損益レベルを上回る事ができた。ここでは2020年1~3月の急落幅を-100としているので、下落幅の133%を回復できた事を意味している。

その後は、コロナ禍にあっても大半の業種においては海外・国内とも堅調な業績&相場環境にあって株価は値を戻していったため、損益レベルは上昇して年末時点では+75.1をマークした。

尚、下図において2019.12~2021.12の24ケ月間の累計損益を表示している。2021.6まで月次推移をプロットしているが、同年7~11月は都合により省略している事ご容赦下さい。

f:id:hassan01:20220101205802p:plain

【損益科目ごとに前年対比】

配当金の受取は概ね変化ない。売却に伴う実現損益は2020年は微小、2021年は一定水準の譲渡益を計上した後でコロナ禍でdamageを受けた一部業種(金融や航空)の株を損切りする事にしたため、本来のレベルから下押ししている。なので、この2年間の大きな差異は、相場水準の違いによる評価損益の多寡にあるのみ。ただ、含み益がピークに達した2020年3月末においても全体として含み損益がマイナスに転じる事はなかったので、どうにか冷静を保つ事ができた。まあ、もう1段の深押しがあった場合、メンタル面にdamageが生じたかも知れない。

f:id:hassan01:20220101205839p:plain

【地域・業種セグメント別損益】

この観点では具体的な定量情報を用意していないので、主観的な書き方となる。

日本株に関しては日経平均が一時3万円を超えた時期にあっても、重厚長大産業の株価は総じて沈んだままにある。一次的に上昇したが、業績の裏付けがハッキリ確認できない企業群に関しては結局のところ上がり切れない。これまで安定保有株と見られていた電鉄株もテレワークの長期化に伴い、まだ上昇の糸口が見えていない。

米国株のパフォーマンスが好ましいのは本当だ。それに対して秋口から中国・恒大グループのデフォルト懸念が生じて以降、香港株などアジア株の成績が奮わない。業種毎に寸評を加えると、医薬品や食品に安定的な銘柄があり、電力株や鉱業株の一部にパフォーマンス改善している銘柄がある。

 

※1/19追記

評価損益だけ突出していると、その内訳を確認したくなる。銘柄や業種ごとに分析しようとすると、直近一年で売却・買付けした銘柄があるので大変だ。切り口として来年以降も継続的に使えないものは汎用的でない。外貨比率が50%を超えていることもあり、為替相場の影響だけ調べてみた。主要通貨レートを2020年末と比較すると、総じて円安に振れている。

f:id:hassan01:20220119133423p:plain

年末の外貨金額を2020年末の為替レートで円換算すると円建て評価金額がそこそこ減ってしまう。その分だけ、為替評価損益が含まれていたって事だ。これが人口減少や国力衰退によるモノなのか、アベノミクスの名残で長期的にみれば一時代の円安なのか判らない。まあ、外貨比率が50%であれば為替レートが円高円安どちらにぶれても中立でいられるだろう。

事業継承について整理する

CFP試験対策もあって整理しておくシリーズのパート5。このシリーズはこれでFinalとするつもりだ。個人的な事情で書いておく点をご了解下さい。 

相続は個人から個人への引継ぎであり、中小企業や個人事業主の場合にはこれまで営々と続けてきた生業の継続も願うものだ。そこで、家族への相続と同時に事業継承もFPの習得すべき範囲に含まれている。

 

(1)中小企業の場合

後継者が容易に獲得しやすいように株価を引下げるとか、それが大変なら株式を後継者に贈与するなど現場でできる事以外にもいくつか策がある。

<a>非上場株式等の贈与税相続税の納税猶予

後継者が都道府県知事の認定を受けた上で、非上場株式の2/3に達するまでの株式に係る贈与につき全額税を猶予してもらう事ができる。相続税については同株数まで課税価格の80%まで猶予される。しかも、特例があって2023年3月までに特例小計計画を都道府県知事に提示する事で、継続雇用が80%以下になってしまっても猶予が取り消されないなど策が講じられている。

<b>遺留分に関する民法の特例

後継者に事業承継させたくても相続人の遺留分を侵害する惧れがあってスムーズにいかないケースもありうる。その場合には、資本金3億円以下(または従業員数300人以下)の中小企業であれば、推定相続人全員から書面で同意を得て「除外合意」や「固定合意」に関して円滑な継承を得る事もできる。そうする事で会社の株式だけでなく、工場や機械など固定資産をスムーズに継承する事ができる。尚、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要になる。

<c>譲渡制限株式を発行

定款に明記する事で一部(若しくは全て)を譲渡制限扱いにする事ができる。

 

(2)個人事業主の場合

「個人版事業承継税制」が使える。仕組みとしては(1)の<a>と似ており、個人事業承継計画を立てて、2024年3月までに都道府県知事の確認を得て、いくつかの追加手続き(青色申告相続税申告+担保提供)を経るもの。結果として、特定事業用資産として400㎡までの土地、800㎡までの建物、その他の減価償却資産をそのまま取得(猶予)できる。尚、継承できるのは前年の事業所得の確定申告のBSに計上されていたモノに限る。

後年、後継者が亡くなった際には、6ケ月以内に申請する事で猶予されていた相続税を免除される。

ここでちょっと所感を述べる。農家の場合、キャッシュが入ってくるのは年に1回、収穫の季節だ。だからいくら農地が沢山あってもそれを相続で分けてしまったら翌年以降の収入に大きく響く事になる。もう20年ほど前だが、私の親戚でも相続で頭を悩ませたケースがあった。こうした税制が農家にも適用されているのだろうか。

 

(3)信託制度を利用

現社長を委託者かつ受益者、後継者を受託者とする事で事業承継していく手もある。受託者が自分の考えで経営できるように指図権を付けないなど工夫が必要だろう。

どういう場合に適用できるのかハッキリ判っていないが、試行期間に使えるのではないか。3年ほど前に「300万円で会社を買おう!」(正式なタイトルは覚えていないのでご容赦)って本が売れていて、実は私もその本を読んだことがある。事業承継に困っている中小企業が多いと聞いたので、承継案の実現に向けたトライアル期間に後継者の資質に間違いないか慎重に判断していく場合などをイメージした。

 

(4)承継以外の形

やむを得ない事情で、他社にM&A(合併と買収:Mergers & Acquisitions)で統合されるケースや、やむなく事業そのものの精算を選択せざる得ないケースもあるだろう。他社のM&Aに応じる場合には、個人名義のまま会社で利用していたモノをあらかじめ名義変更しておくとよい。

 

【2021.12.7修正】内容的に齟齬ないが、2ケ所ほど文章を訂正した。

相続税の引き下げテクを探ってみる

本日も、CFP試験対策もあって整理しておくシリーズのパート4。個人的な事情で書いておく点をご了解下さい。

相続税計算の仕組みが分かると、自分で相続財産を貰える訳でもないのについ「どうしたら節税できるんだろうか」と考えてしまう。自分には縁が無い事でも、顧客から相談を受けた場合に備えてって事なのか、CFP試験では「xxxしたら課税金額をいくら引下げられるか?」って設問が載っている。CFP試験が民間資格と言えども、これにはちょっと驚いた。

いきなり話が脇道に逸れるが、以前に読んだ小説「プライベートバンカー」では、5年間(現在では10年間に延長されている)海外に滞在して晴れて非居住者になるのを今か今かと待ち焦がれている金持ちが描かれていた。

でも、隠れるように東南アジアで暮らしていて何が楽しいのかサッパリ判らなかった。まず言葉で疎外感を味わうし、食べ物が珍しいのは最初の内で5年も我慢するにはキツ過ぎる。彼らに近づくプライベートバンカーの姿もえげつないと感じたのを想い出した。そうしたダークな話は別として学んだ事を整理してみたい。

さて、正規の課税対象額引下げロジックを復習する意味で、以下にいくつかの策を述べていく。ちょっと打算的な記事になってしまうが、そこはご容赦下さい。

 

【対策1】人的控除を拡大する

これは即ち、法定相続人を増やしておくって事であり、養子を増やす事だ。養子は実子の有無によって1~2人まで認められている。人を増やす事で2つのメリットがある。一つは基礎控除額を1人につき600万円を増やす事ができる。また、被相続者を被保険者とする生命保険に契約した場合、1人につき500万円の控除を増やす事ができる。

CFP試験の過去問を参照すると、養子の候補になるのは孫、配偶者の連れ子、子供の配偶者などだ。いくら試験問題とはいえいろいろなパターンが現実的にあるのだろう。

 

【対策2】相続財産の評価額を減らす

現預金が100あった場合には額面通りで評価される。それに対して、不動産は固定資産評価額で構わないので、時価に対して7割程度に設定されているのでオトクになる。更に続きがある。土地を賃貸借契約で誰かに貸しておくと、借地権比率に応じて減価する事ができる。自用地(自分の土地)に賃貸アパートを建てて貸しておけば、恒常的に空室になっている部分を除いて借家権比率に応じて減価する事ができる。

これらは都心部や田舎の土地持ち農家でよくやられている手法なのだろうが、試験勉強して見る事で初めてそのロジックを理解できた。勿論、相続税対策として有効なのは判るが、アパート建設にどの程度自己資金を使うのか、金利負担に耐えられるのかなど、キャッシュフローを冷静に試算しておく必要がありそうだ。

資産評価を低減させるには生命保険も使うことができる。家族を被保険者にした契約を結んで、自分が保険料を支払っておく。その場合、保険支払いは未だ実行されていないので生命保険を解約返戻金(+剰余金分配額+前納保険料)で評価する事になる。一般的に解約返戻金は保険料の70~80%に留まるので減価できる仕組みだ。

 

【対策3】贈与を活用する

一般的なのは、基礎控除が110万円ほど適用される暦年贈与を積み増していく事だ。婚姻関係20年以上の配偶者への贈与であれば、配偶者の住宅(若しくは住宅購入のための資金)を2000万円まで非課税にできる制度がある。しかも基礎控除の110万円も使うことができる。

他にも、贈与特例は3つほどある。これらは贈与者や受贈者の年齢・所得に制限があったり、金額上限がバラバラでなかなかスンナリと覚えにくいものだ。ただ、ライフステージのそれぞれの段階で効率的に活用する事で相続税を圧縮する事ができるのでチェックすると良いだろう。

直系尊属から住宅取得資金等資金の贈与
・教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
・結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

尚、相続時精算課税制度は節税としての意味はないが、課税時期を繰り延べる事で結果として相続資金を早めに有効活用する事はできる。

 

【対策4】相続のルールを押さえておく

相続は世代間のリセットとも言えるだろう。なので、「3代経過すると財産がゼロになる」なんて言葉もある。それを緩和するためには、1世代飛ばして法定相続人以外の孫に贈与・遺贈しておく事も税金を軽減する智恵になる。別に贈与税を支払う必要はあるものの、もし大金がある場合には有効なのだろう。事実、そんな過去問もCFP試験の前に解いてみた。

稀なケースながら、①法定相続人でない人、②法定相続人だが相続放棄して遺贈も受けていない人に生前贈与しておく事で、生前贈与の加算を回避できる。

他に相次相続があった場合にも一定の税額控除の仕組みが用意されている。

 

*

以下は余談になる。CFPの勉強をしてみると、贈与の特例があまりにも多い点が気になる。自分がそれを利用できる立場にあれば嬉しいけど、そうでもない。それなりの金融資産がないと贈与の特例を受けるにも受けられない。2021年10月の衆議院議員選で「金融資産課税強化」の論調が出てきたが、金融資産は譲渡所得だけでなく利子所得も含まれてくるので、今のような低金利時代だと意識する事もないが、銀行利息も20%課税から更に税率が上がるのが庶民も一律に影響してくる。それに対して、贈与税の非課税特例は限られた人々しかその恩恵を受けられないものであり、こうした箇所から見直していくのが筋ではないだろうか。

前年より自民党にて相続税贈与税の一体化が議論されている。そのため、例えば暦年贈与を直近3年間ではなくもっと長めに生前贈与加算する(のでは)とか、相続時精算課税制度に1本化する(のでは)と言った話が新聞・雑誌などを賑わしている。但し、2021年11月末時点で相続税贈与税の見直しで決定した事柄はない。

【2021.12.7追記】対策4に関して言葉を補記した。また相続・贈与税の今後の見通しに関して最終段落を追加した。