H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

インフラ投資ファンドの資産運用報告書を読んでみる

インフラ投資ファンドとは何か。あまり知らない分野だけに勉強を兼ねて読んでみた。尚、有益なネット情報を読んで知った事は各項の【註】に付記した。

(1)インフラ投資ファンドに注目した理由

昨年、あるセミナーに参加した時に30代と思しき人からこんな言葉を聞いた。

「株は値動きが激しいので怖い。でも太陽光投資は債券投資と一緒。お日様が上ってくれば発電してくれるので、後はチャリンチャリンとお金が貯まっていくだけ」

そう言われても、不動産投資なんてした事ないしドカンと借金する勇気もない。ただ、REIT(上場不動産投資信託)と同様にインフラ投資ファンドなら簡単に始められる。しかも最近はやりのSDGsとの相性もいい、それがインフラファンドに興味を持った理由だ。

尚、この項を書くにあたっていくつかネット記事を参照した。インフラ投資ファンドの概要に関してはそちらを参照願いたい。尚、ここでは個別サイトの紹介はomitする。

【註】インフラ投資とは太陽光発電以外にも風力などの再生可能エネルギー発電もあり得るし、空港や大規模施設の運営権もあり得るとの事。日本では太陽光発電に対する20年間の固定価格買取制度(FIT)があって収益が見通しやすいとの事。

(2)銘柄選定

では、どの銘柄が良いのだろうか。上場しているファンドはまだ1桁しかない。少しネット検索してみたが、以下の理由からタカラレーベン・インフラ投資法人のHPを参照してみた。以下にattachしたのはいずれも第10期資産運用報告書だ。

・親会社が上場している
・相対的に見て出来高の多い
・上場第1号
・以前、テレビ東京「モーニングサテライト」でタカラレーベン若い女の子が「いい大人が長いモノにまかれていちゃあ駄目だぞ」って大人をたしなめるCMを流していたのが印象に残っていた

<仕組みと特性>

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(3)分配金

時価120,000円くらいなのに対して半年間の利益分配金は3,300円程度。年額で6,600円と仮定すると税込み利回り5.5%程度。利益超過分配金が支払われるため、REITと同様で原価(買値)管理が面倒そうだ。

【註】減価償却費の一部が利益超過分配金として支払われるとの事。それは太陽光発電場所は土地が比較的安価な所に立地するため、相対的に建物コストの割合が高くて減価償却費(20年間。しかも20年後にも70%以上の発電能力が残っているとか)の割合が大きくて実際にcash-outしていないからだとか。でも、そんな理屈は上場会社の配当政策で聞いた事ないけど。

(4)成長性

個々の銘柄で比較していないけど、REITよりもインフラファンドの利回りが高いだろう。オフィスビルREITのように入居率を心配する事もない代わりに、安定性100%で成長性がないためなのか。

NOIは増加傾向にあってもそれは口数を増やしているためであって、一口当たりの指標が増えているとは言いにくい。それと、発電設備の更新後の見通しが理解できていない。建物や構築物の耐用年数が19~24年と書かれていたが、その頃にどの程度の更新費用が掛かるのか素人には判らないのだ。

<運用状況等の推移> ※2018.6~2020.11の2.5年間、5決算期のデータ

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(4)太陽光発電の粗利

実はこれを知らなかったのだが、素人は資産運用報告を斜め読みしてもハッキリ掴めなかった。と言うのも、発電設備ごとの収益状況は載っているものの、それが電力収入・電力収支ではなく「最低保証賃料」と書かれていたためだ。体制図を見ると、タカラレーベンとインフラ投資法人の間で賃貸契約があって、太陽光発電の収入を得ているのはタカラレーベン本体のようだ。

なので、太陽光発電がどの程度の利益を上げているのかハッキリ確認できていない。ただ、賃料収入を上げている点を捉えるとREITと同じ収益構造でシンプルなのかと納得できた部分もある。

(5)発電設備ごと一覧情報

物件No1~38が並んでおり、所在地は関東地方に偏っている。パネルメーカーは10社程度に分散されている。

ただ、買取価格は漸減傾向にあるようだ。Sequenceの最初の方だと買取価格が36~40円/kWhとなっているのに対して、最近になって取得したであろう末尾の方になると24~36円/kWhと低下している。これが将来的な採算悪化を意味しているのだろうか。また、残存調達期間が13~19年と書かれていた。

【註】固定買取価格は2012年の40円から2020年の13円まで徐々に切り下がってきている。他方で発電パネルの価格低下もあって、そこまで利益水準の低下にdependしていないとの事

(6)リスクの把握

成長性以外のリスクに関して、資産運用報告書からは読み取れなかった。ただ、ネットで得た知識も合わせると以下の通り理解した。

・固定買取価格が20年であり、その先の収益の確実性が見えない
・災害時のリスク対応(どこかで読んだけど他の会社によっては水面に太陽光パネルを置いているとか)
・地理的リスク分散(関東地方に固まっている印象あり)
SDGsは追い風だが、売電してる以上は送電会社に調整弁として使われる懸念はないのか

【註】地震に関してはPML値で管理されており、REITよりも手堅いらしい