この記事もCFP試験対策であり、弊方の頭の整理を兼ねて書いておくもの。住宅購入時には少しでも多くの頭金を自分で調達できるに越した事はないけども、いざ試験勉強してみると優遇制度も整っている事が判る。
尚、1項と2項は購入時に使える制度であり、3項は相続後の土地売却で譲渡所得を軽減できるものだ。
(1)直系尊属から住宅取得資金等の贈与を受けた場合の非課税制度
省エネ・耐震住宅であれば1200万円、その他の住宅であれば700万円まで非課税となる。その条件は……
・受贈者が20才以上でその年の合計所得金額2000万円以下
・床面積50~240㎡
・耐震であれば建築後25年以内、その他であれば20年以内
・贈与を受けた翌年3/15までにそこに住む
・基礎控除(110万)or相続時精算課税制度いずれか利用可
尚、合計所得金額が1000万以下であれば、床面積40~50㎡未満であっても非課税制度あり。
(2)相続時精算課税制度
通常の贈与税は110万円超で課税されるが、世代間の移転を促進するために同税を軽減するもの。即ち、2500万円までは非課税として、超過分につき一律20%課税して、将来の相続時に贈与分もまとめて相続税を計算する制度である。その条件は……
・60才以上の父母や祖父母から推定相続人となる子や孫(20才以上)に対して
・贈与を受けた翌年2/1~3/15に「相続時精算課税制度選択届出書」を提出
・基礎控除(110万)は利用不可
(3)相続税の取得費加算
相続した土地を一定期間に売却する場合には、既に支払った相続税の一部を取得費に加算できるもの。二重課税を防ぐための緩和措置と考えると判りやすい。その条件は……
・相続税を支払い済
・相続税の申告期限の翌日から3年以内の譲渡
例えば、土地=100、建物=20を相続して、相続税を7支払ったものとする。後でその土地を150で譲渡する場合、通常であれば
譲渡所得=150―100=50
となる。そこに相続税のうち土地に起因した分を計算して取得費に加算できるので
譲渡所得=譲渡金額―(取得金額+相続税額×(土地相当額/相続した土地と建物の合計金額))
=150―(100+7×(100/(100+20)))
=150―(100+6)
=44
と圧縮できる。
このロジックは確定申告書に載っている「外国税額控除」の発想と似ている。こちらは配当金に関して海外と日本国内で二重課税されているので、海外での課税分を考慮して所得税の計算で若干割り引いてくれるものだ。
例えば、外国株の配当金=100、外国での配当課税=10、国内での配当課税=15だったとする。他に給与所得=400あり、所得税額=30だったとする。その配当金に関して総合課税を選択すれば、
外国税額控除
=外国での配当課税×(外国での所得/所得総額)
=10×(100/(400+100))
=2
となり、所得税額30から2が税額控除される事になる。
「相続税の取得費加算」にせよ「外国税額控除」にせよ、既に支払った税金の一部を考慮して所得税を計算してくれる制度が備わっていると言える。
【2021.6.10補足】
誤解の無いように補足させて下さい。
・通常、贈与税は年間110万円まで非課税となる。
・(1)と(2)は所得税の住宅ローン控除と併用可能。
・(1)に挙げた非課税限度額が古いものだったので訂正する。適用時期によって上限が異なる制度であり、上記の金額は古いものだった。現在(2021年末まで)は省エネ・耐震住宅であれば1000万円、その他の住宅は500万円までとなっている。
【2021.12.7補足】
(1)に一文追加にした。また(2)の制度は不動産取得に限定した制度ではなく特に利用目的を決めているものではない。念の為。