H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

家計簿をどう記録していくか

先日の勉強会で家計簿アプリの話題があった。最近はスマホで簡単に管理できる家計簿アプリもある。と言っても自分では試した事がないので、歯切れ悪く「あるらしい」としか言えない。

その勉強会では、あるアプリを紹介していた。気になったのは次の2点だ。

・アプリを切り替える事で、個人の家計簿、夫婦の家計簿、個人事業主としての家計簿を併用できる
・銀行やクレジット・カードの利用明細を連携できる

確かに便利そうだし、家計簿を習慣付けるためにはそうしたアプリは有用なのだろう。でも、いろいろな課題があるようだ。

・クレジット・カード会社から届く明細データでは使途がハッキリ掴めない。二重countされてしまう
・historicalな傾向分析や前年対比などの機能がない

なので、どこに力点を置くのかあらかじめ考えた上で家計簿を扱う必要がありそうだ。お金が貯まらないとか給与より支出が増えてしまう事は家計簿で解決できる悩み事ではない。サラリーマンとして奮起するか、意志を強くして節約に励むしかないだろう。むしろ家計簿で管理すべきは支出の傾向把握だろう。その観点において問題はザックリ2つあると思う。そこについて簡単に私見を述べていく。

(1)正確な出費明細を把握できない

いくらマメに記録を付けていっても、現実の出納記録、殆どは出費の明細になるが網羅し切れないだろう。そうすると、列挙した所で「どうして!」と悩んでしまう。あまりにも差額が大きいと叫びそうになってしまう月だってあるかも知れない。

そんな時は現実を優先して考える事がいいだろう。たとえ机上でしっかり計算して20万円しか使っていないと思っていても、手元の現金がそんなに残っていなければどこかでジュースを呑んだり、友人と外食していたり、そうした隠れ出費があった筈。そんな忘れていた出費を細々と洗い出すのも手間だし、記憶に残っていない事を思い出すのはムリ。なので、そこは使途不明金=1万円としてあっさりと片付けてしまおう。

そのために必要な事は、前月末の現金、当月の収入、当月末の現金を数えておくだけで大丈夫。現物管理に勝るものなしって事だ。後は引き算して支出合計を出せばいい大丈夫だ。

【例】

家計簿に記録されている支出=20万円
前月末の現金=50万
当月末の現金=49万
当月の収入=30万
当月の支出=前月末の現金+当月の収入―当月末の現金=50+20―49=21万円

→当月の支出=21万、うち使途不明金=1万円

これで大丈夫!

実は私の場合、家計簿にキチンと書いていないので、恥ずかしながら毎月5~6万円くらいの使途不明金が転がっていた。

かつてIT企業で某会社の経理システムに関わっていた時に驚いたのだが、部ごとのBS/PLの積上げと全社BS/PLが必ずしも一致しなかった。連結決算では「その他・消去」の欄があれるけどそれとは別で単体決算の話だ。数字はどうしても作る過程でいろいろな会計仕訳を反映していく。外貨を円転する計算もあるし、金額の差異分析を依頼されたけど原因は複合的なモノであって全てを審らかにする事はできなかった。そんな経緯もあって、家計で「使途不明金」が発生する事にはあまり引っ掛かりがない。事実をありのままに認識するのみだ。むしろ、差異をハッキリさせるためにムダな労力をかける事の方が余程バカらしいと思えてしまうのだ。

尚、PLで完結しないで、貯蓄に回したり住宅ローンを返済したりB/Sとの間で現金の出入りがある場合にはもうちょっと考慮する事があるけど、そちらはまた改めて書きたい。

(2)単月の積上げでは傾向を掴めない

ある月に21万円の支出があったとして、年間支出は21×12ケ月で252万円で済むのか。おそらく夏休みに海外旅行に出掛けたり、車や家電を買い替える必要が生じたりして単純な掛け算では収まらないだろう。知らぬ間にお金が消えていき、300万、400万と生活費は膨らんでいくものだ。

なので、家計簿の細々した帳尻合わせをするよりも年間コストを掴んでみる事をオススメする。この年間コストには何らかの臨時支出も含まれており、それはおそらく来年も再来年も程度の差こそあれ必要になってくるものだ。家計を絞るのも大事だけど、まずはムリなく現状を年間ベースで把握してみよう。

もうここから先は1円単位で掴む必要はない。千円単位、もしくは万円単位で構わないだろう。

実は、私もある時にガーッとまとめてみた事がある。ちょうど手術を受けて会社を2週間ほど休んだ頃だった。幸い病気の方は快方に向かったのだが、金銭的な心配が頭をもたげてきたのだ。もし会社をクビになったとしてどこまでやっていけるのだろうか? そもそも年間でそれくらいの支出になっているのだろうか? これまで元気に働いている頃には全く考えもしない事だった。

ただ、そうして年次の手取り収入と支出を整理してみると、ちょっと安心できた。年にいくらくらい貯蓄に回せているのか、支出の大まかな内訳もいくつかにカテゴライズして一覧表を作成してみた。住居費、医療費、旅行費など、それとその他欄も作ったのだ。これは(1)で挙げた「使途不明金」とは別物だ。尚、ここは千円単位で構わないのでかなり粗く集計している。住居費は家賃に水道光熱費を年12万円くらい加算するとか、あくまでも大きな傾向を捕まえられれば十分だと考えたのだ。

その表をベースにして年間のコスト内訳を10年くらいプロットしていくと、年ごとの差はそんなに大きくブレない事が判った。それと、残業が多くて仕事に忙殺されていた年は支出もそれなりに抑えられている事に気付いた。また、「その他費用」が10年通してほぼ一定の範囲内に収まって安定していた。ただ、コロナ禍に沈んだ2020年に限ってはこれまでの平均よりもガクッと落ち込んでおり、やはり2020年は異常な年だったのだと改めて感じたのだった。

<その他費用の年次推移>

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だったらこれまでももっと節約できたでしょ、と言われてしまいそうだが過去を振り返っても仕方ない。むしろ、コロナ収束後に日本中で溜まっていた消費欲が爆発するんじゃないか。そこでちょっと弾けた後に、改めて反省すれば大丈夫でしょう。

私が作成したhistoricalなコスト内訳表、それと今回は省略したけど年次の収支概算把握表については改めて紹介したい。