H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

FIREの実践例と実現可能性を探る

FIRE(Financial Independent Retire Early)に関しては、過日別の記事で触れたのでそちらを参照。

「AERA」のFIRE特集を読んでみた - hassan01’s diary (hatenablog.com)

話を伺ったのはFIREするためのHowToセミナーではなくて、FPがFIRE達成者の例を挙げて客観的にFIREを分析してくれたものだ。FPの講師はFIREする意思がなさそうなので極めて冷静なtalkだった。今回はその話を聞いて思った事をいくつか書いていく。

(1)FIRE実践者の例

三菱サラリーマン氏は著書を読んで知っていたけど、他に2名ほど紹介されていた。

・三菱サラリーマンさん
・村野博基さん、43才で、区分マンション28戸保有、著書あり
・金村圭介さん、33才で、投資信託保有、著書とHPあり

これらの人達が必ずしも全員「億り人」になってからFIREした訳でもないのに驚いた。未婚の方も既婚の方もいるが、総じて生活費を低く抑えている印象だ。また、金村圭介さんの場合にFIREした後で年間支出が50万円ほど増えている。それはリッチな暮らしを始めたからではなくて社会保険料の負担が増えたためって言うのが、サラリーマンの社会保険料は労使折半になっているためだ。噂によると優良企業であれば過半を上回って福利厚生費で補助している会社もあるとかないとか。サラリーマンはいかにも社畜(三菱サラリーマン氏の言葉を拝借)として大事に守られている事の証だ。

(2)FIRE後の暮らし方

長年サラリーマンを続けていた人が定年を迎えたら居場所がなくて大変だと言う。ヤル事もない。ここも焦点を当てたかったのだろうが、何事も健康(自己資本)とお金(金融資本)に支えられているってcompactな整理はFPとして正しい。

論点として抜けていると感じたのは2点ある。1つは橘玲がどこかの本で書いていた社会資本も不可欠だって事。もう1つは健康寿命はそんなに長くないって事だ。

時間が余ってヒマだと思うかも知れないが、時間は淡々と過ぎ去って行くし、ヒマだと思うのは他人の邪推に過ぎないのではないか。人生がずっと永久に続くような錯覚に陥る時はあるものの、やはり有限であり生物としての寿命はどんどん延びていても健康で暮らせる時間は限られている。男の健康寿命は平均74才くらいであって、平均寿命より10才ほど短いのは厳然たる事実だ。

(3)FIRE後に4%の運用益で回るのか

ここに対しては楽観的な見方を示していた。私が上記リンクで書いたものと比べるとかなり明るい。

ただ、この講師は「アセット・ロケーション」なる言葉で有利に運用するべきと話していた。アセット・アロケーション(=いくつかの背セットクラスに配分)はよく使われているけど、ロケーションとは普通の課税口座と非課税制度を上手く使い分ける事を意味する。即ち、折角、国がNISAやiDeCoなどの非課税制度を用意しているのだから、ハイリターンを狙えるアセットクラス(株式や株式型の投資信託ETF)に非課税制度を使っておきましょうって事だ。アセット・ロケーションおそらく造語だろうけど、言わんとしている事は正しいと思う。しかも、これを実践するのはいかにも容易だ。

(4)FIRE後の社会保険料

講師の話は正しい。ただ、実際には既存の制度を活用する事で、国民健康保険国民年金もずっと安く抑えられる筈だ。

(5)日本の公的年金制度は安泰

講師によると、公的年金はざっくりこんな構造になっているとの事。いずれも令和元年度の数字である。

保険料収入=38.9兆円
国庫からの収入(税金か)=13兆円
年金給付=55.1兆円

これだけ見ると差引3.2兆円のマイナスに見えるものの、年金積立資産が166.5兆円もあってそこからの運用益が捻出されてくるので単年度では黒字を維持しているとの事。なんだ、巷では漠然と年金不安説とか年金破綻説が流れていて若者の年金保険料の支払いが停滞していると聞いたけど、実態はもっと健全だったのか。インフレの波が訪れたらどうなるのか不安はあるけど、先ずはちょっと安心した。

ただ、以下の数字を見比べると、国内の見方の方がやや楽観的に過ぎるように映った。これは個人的にはどちらでも構わないけど、国の年金運用って観点で見るとriskyだと感じた。

・GPIFが推計する今後25年間の期待リターン: 外国株式=7.2%
JPモルガン・アセット・マネジメントによる今後10~15年の期待リターン予測: 先進国株式=3.4%、新興国株式=5.8%