H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

公的年金保険料を税金に変えると

公的年金制度に関しては楽観的な政府見解といろいろな方面からの悲観論も多い。

3年ほど前には年金2000万円問題が噴出したけど、足らないと思う人が多数派なだけに尤もな見解だとは思った。ただ、家庭ごとそれぞれの事情や地域ごとに物価の高低もあるので、それほど深刻じゃないって人もいた。私も、2019年の某旅先で「うちは田舎だから足りないなんてあり得ない」ってノンビリしたコメントを聞く事もできた。だからと言って、この前まで財務大臣をされていた麻生さんの「受け取らない」って歪んだ態度は頂けない。

さて、なんのTV番組で見たのか覚えていないが、選挙期間中に公的年金制度に関する議論を戦わせていた。確かBS放送の民放だったと思う。誰が出演されていたのかハッキリ覚えていないので、手元に残していた手書きメモを改めて眺めながら、所感を書いていく。

どうやら日本の公的年金は1939年(太平洋戦争の直前)に始まったとか。その当時は積立方式だったと言う。なんだ健全だったじゃないか。

そのうちに積立金があまりにも溜まってきたので、高齢者にバンバン支給したり、余計な施設を作ったらしい。その結果、負担に耐え切れなくなって賦課方式(同時代に若者から高齢者へ支える)に変更されたのだと言う。やっぱり日本の官僚とか政治家って計画性のないアバウトな生き物だ。

厚生労働省が発表しているモデル世帯だと、専業主婦の前提で家計の手取り収入35万円、年金になると22万円を貰える想定なのだとか。ただ、現在の日本では共働き世帯が多いのでこれがモデルとして妥当なのかって意見も出ていた。ここの議論は巷に溢れているのでここでは割愛する。

そのTV番組で面白かったのが、社会保険も税金にしてしまえばいいじゃないかってドラスチックな案が出ていた事。この辺りで寝落ちしてしまったので、ここからは個人的な所感を書くのに留める。

社会保険料も給与天引きされるモノなので、実感としては所得税や住民税と変わりない。なので、総論としては税に1本化しても構わないと思う。ただ、気になる事もある。2つほど挙げてみよう。

(1)上限等級と累進課税は逆向き

社会保険料は標準報酬月額を基準に決められているが、給与の高い人には上限(上限等級)が設けられている。これは累進課税されている所得税と徴収するロジックが異なるのでどう整合させていくのか。高額所得者は明らかに増税になり、しかも公的年金を青天井で貰える訳ではないだろうから不満が出てくる。

また、かつては賞与から社会保険料を控除するルールがなかったが、社会保険逃れの名目で賞与の割合を増やす会社があったため、10年ほど前から賞与でも徴収する事になった。税の徴収ルールが変更されれば人によって有利・不利が生じるのは否めないが、国としたら総額として1円でも多く掻き集めたいだろう。その点で不公平感を生まないルール決めが必要になるだろう。

勿論、一口に社会保険と言っても健康保険・厚生年金・雇用保険と3種類ある。このTV番組の論点からすると厚生年金だけだと理解するが、その辺もハッキリと整理しておく必要があるだろう。

(2)既存の積立金の行方

不公平と言えば、これまでに積み立てた年金額が制度移行によってどのように保証されるのか、それが大きな問題になる。年に一度送られてくる「ねんきん定期便」でもあなたの積立額がxxx万円、65才以降は毎年xxx万円もらえます、って書かれている。その根底が制度変更されたらどうなってしまうのか、正しく移管してくれるのか、年金記録でさえ記載洩れが社会問題になって政府が叩かれて、ドサクサに紛れて役所の看板を掛け換えてしまった。

個人的な経験を話すと、サラリーマンとして10年以上前に退職金制度が廃止されてDC(確定拠出金制度)に移管された時に、適格年金や企業年金の積立金は全て返還された。正確に書くと、返還された金額をDCの初期積立金として移管した人もあれば、キャッシュとして受け取った人もいた。でも、1企業の手続きならまだしも、現実的にそんな移管作業を国レベルでできるんだろうか。勿論、移管する限りは「最後の1人まで」間違いなく正確にやってもらわなくては困る。特別給付金10万円でも、ワクチン接種の予約券配布でも混乱はつきもので、その都度この遅さは何だろうと疑問に思ってしまうのがここ2年のコロナ禍で澱のように溜まっていった鈍い感触だ。