H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

事業継承について整理する

CFP試験対策もあって整理しておくシリーズのパート5。このシリーズはこれでFinalとするつもりだ。個人的な事情で書いておく点をご了解下さい。 

相続は個人から個人への引継ぎであり、中小企業や個人事業主の場合にはこれまで営々と続けてきた生業の継続も願うものだ。そこで、家族への相続と同時に事業継承もFPの習得すべき範囲に含まれている。

 

(1)中小企業の場合

後継者が容易に獲得しやすいように株価を引下げるとか、それが大変なら株式を後継者に贈与するなど現場でできる事以外にもいくつか策がある。

<a>非上場株式等の贈与税相続税の納税猶予

後継者が都道府県知事の認定を受けた上で、非上場株式の2/3に達するまでの株式に係る贈与につき全額税を猶予してもらう事ができる。相続税については同株数まで課税価格の80%まで猶予される。しかも、特例があって2023年3月までに特例小計計画を都道府県知事に提示する事で、継続雇用が80%以下になってしまっても猶予が取り消されないなど策が講じられている。

<b>遺留分に関する民法の特例

後継者に事業承継させたくても相続人の遺留分を侵害する惧れがあってスムーズにいかないケースもありうる。その場合には、資本金3億円以下(または従業員数300人以下)の中小企業であれば、推定相続人全員から書面で同意を得て「除外合意」や「固定合意」に関して円滑な継承を得る事もできる。そうする事で会社の株式だけでなく、工場や機械など固定資産をスムーズに継承する事ができる。尚、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要になる。

<c>譲渡制限株式を発行

定款に明記する事で一部(若しくは全て)を譲渡制限扱いにする事ができる。

 

(2)個人事業主の場合

「個人版事業承継税制」が使える。仕組みとしては(1)の<a>と似ており、個人事業承継計画を立てて、2024年3月までに都道府県知事の確認を得て、いくつかの追加手続き(青色申告相続税申告+担保提供)を経るもの。結果として、特定事業用資産として400㎡までの土地、800㎡までの建物、その他の減価償却資産をそのまま取得(猶予)できる。尚、継承できるのは前年の事業所得の確定申告のBSに計上されていたモノに限る。

後年、後継者が亡くなった際には、6ケ月以内に申請する事で猶予されていた相続税を免除される。

ここでちょっと所感を述べる。農家の場合、キャッシュが入ってくるのは年に1回、収穫の季節だ。だからいくら農地が沢山あってもそれを相続で分けてしまったら翌年以降の収入に大きく響く事になる。もう20年ほど前だが、私の親戚でも相続で頭を悩ませたケースがあった。こうした税制が農家にも適用されているのだろうか。

 

(3)信託制度を利用

現社長を委託者かつ受益者、後継者を受託者とする事で事業承継していく手もある。受託者が自分の考えで経営できるように指図権を付けないなど工夫が必要だろう。

どういう場合に適用できるのかハッキリ判っていないが、試行期間に使えるのではないか。3年ほど前に「300万円で会社を買おう!」(正式なタイトルは覚えていないのでご容赦)って本が売れていて、実は私もその本を読んだことがある。事業承継に困っている中小企業が多いと聞いたので、承継案の実現に向けたトライアル期間に後継者の資質に間違いないか慎重に判断していく場合などをイメージした。

 

(4)承継以外の形

やむを得ない事情で、他社にM&A(合併と買収:Mergers & Acquisitions)で統合されるケースや、やむなく事業そのものの精算を選択せざる得ないケースもあるだろう。他社のM&Aに応じる場合には、個人名義のまま会社で利用していたモノをあらかじめ名義変更しておくとよい。

 

【2021.12.7修正】内容的に齟齬ないが、2ケ所ほど文章を訂正した。