H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

日医工は大丈夫か

先日、日医工の経営に関して心配なニュースが出ていた。この問題を考えてみよう。

産経新聞HPより>

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(1)状況整理

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後発薬大手の日医工が私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を検討していることが12日、分かった。品質不正で2021年3月に業務停止命令を受け、業績が悪化していた。国の普及策によって市場拡大の続いた後発薬は品質不正が相次ぎ、再編の局面に入っている。
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※出典
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC120P70S2A510C2000000/

その直後に検討していた事が現実になってしまった。

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13日、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請したと発表した。……(中略)……日医工は品質不正により業務停止命令を受けたことで業績が悪化し、同日発表した2022年3月期連結決算(国際会計基準)は1048億円の最終赤字だった。
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※出典
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC130VQ0T10C22A5000000/

 

(2)株は切り返している

Yahooで株価チャートも見ておこう。(5/19終値べース)

<YahooFinanceより>

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(3)後発品メーカー

日本医薬品工業と言う昔の名前で覚えている。いかにも地味な社名だ。後発品メーカーなので代表的な薬品もなさそうで、特に保有を考えた事もない。

後発医薬品は怪しい。いくら同じ成分を有していると言っても全く同じものを作っているのか分からない。何よりも薬価が割安になっているのってその効能を疑ってしまう。医師によっては「抗生物質ゾロ品は効かないからダメ」って言い切っている。だから、自分が薬局に処方箋を持ち込む時には、多少高くなっても構わないのでなるべく後発品(ゾロ品)を避けるようにしている。特定のゾロ薬に関しては剤型の違いで先発薬より有用なものがあるのは知っているが、ここでは議論の本筋から逸れるので割愛する。

そんな中、昨年だったか小林化工(福井市)を筆頭に後発品メーカーの不祥事が続いている。そもそも自分達で定めた手順・ルールに則して製薬すべきものを、ルールを逸脱して製薬していたとか。

鉄鋼・金属メーカーで検査不正の不祥事が出るたびに呆れてきた。真偽はともかく「検査基準を満たしていないが品質に問題ない」って言い訳もどうかと思うけど、確かに事故が起きていないし産業用の製品ならまあいいか、と流してしまう面もあった。

でも、薬品となればそうはいかない。そもそも先発品メーカーが開発コストを負担して、苦労して厚生省の認可を得たものだ。それを、特許期間が切れたから安く作れると言って、全く同様の薬剤が製造されているのだと、信用できるのだろうか。しかも、開発費が不要なので製造費だけだから安く作れる。だから、ゾロ薬は安い。

厚生省も国民医療費を抑える目的で、処方箋の右下に小さく「後発薬を利用して構わない」と謳うなど、ゾロ薬の利用を積極的に誘導してきた。いま手元に処方箋が無いので正確な文言を記憶していないが、「後発品を処方しない事」にレ点を入れさせる形だったかも知れない。

(4)例外的に大事な会社

黒柳徹子高橋英樹など芸能人を使ってテレビCMを流している○○製薬、△△薬品と異なり、ここは必要な会社だと思っている。私がかつて手術を受けた時にも診療明細を見ると日医工の薬が投与されていた。もう何の薬だったか覚えていないけど、どーでもいい外来処方の錠剤ではない。術中か術後に投与された注射薬が日医工のモノだった。

同社のHPを見ても、他社のメジャーな先発薬をごっそり扱っている事が分かる。「日医工製品名」のあ行で検索してみると、殆ど聞いた事がない名前ばかりだ。でも、隣りに書かれている「先発製品名」で辿っていくと、実はメジャーな薬の名前がゾロゾロ出てくる。こんなに関わっていたのかと驚くレベル。

日医工の製薬例> ※HPを参考に作成

個々に書いていないけど、先発品メーカーの名前を知っている分だけでも挙げていくと、グラクソ・スミスクライン、ノバルティス、第一三共、アステラス、ファイザー田辺製薬などだ。この手の薬を「正しい工程を守って」安価に製造できているなら確かに需要があるのだろうと容易に想像できる。

なので、1人の消費者としては後発品メーカーだけど必ず立ち直って欲しい会社なのだ。JALや日産とは社会的価値が違う。

まあ、患者の一人としては後発品制度を廃止してくれた方が安全性の観点で嬉しいけど、海外諸国でもこの制度が運用されているのでそこまでの極論も言えない。

(5)投資家としての思い

JALや日産、山一のように以前から怪しいと噂されていた会社であれば、株価も転がり落ちてくるし新聞報道で気付くもの。それに対して、この日医工は全くノーマークだった。なので、他の倒産企業と違って驚いたのだ。それに割安な価格を提示して先発薬メーカーを駆逐しているのであれば、他社の製品やサービスでそこそこ代替がきく会社であれば仕方がないと思う。けど、医薬品は後発品であってもそれを必要とする患者がいる限りいきなり業務停止に追い込む訳にはいかない。

また、個別株に投資する投資家としては、こうして突然死のように上場企業が破綻に追い込まれて損失を抱え込むようでは困る。何のために、東証プライム市場ができたのだろう。東証の審査によって認められているからプライムに上場しているのではないか。そもそも1部上場企業数が頭でっかちになっていた問題は何も解決できていない。

昨今は、米国株でも日本株でもインデックス投資がもてはやされている。それは個々人の趣向なので構わないが、私はインデックス投資はほぼ関わっていない。インデックス投資だと確かに手間は掛からないし、こうした倒産リスクも1/100とか1/1000に薄められるので偶に羨ましく感じる事もある。でも、それは本流でないと考えるのだ。相手の顔が見えない投資はヤル気が出ないな。