6/13現在の為替レートは約135円/米ドルと大きく円安に振れてきた。
<6/13_NHKサイト>
ニュースでは円安で物価上昇を報じており、評論家の解説でもこれまでなかったような予想レートが出てきた。ある人は「150円もあり得る」、「長期的に150~200円」との声も上がっていた。
「日本円の価値が1970年代に逆戻りした」。こんな記事が新聞紙面に載ったのは今年2月、つい3ケ月前の事だった。リアルな為替レートでなく購買力平価ベースで大きく下落したのを見せつけられるのはいいものではない。因みに2月末の円ドルの為替レートは約116円/米ドルだった。それにしても僅か3ケ月での急落は振れ幅が大きい。
<日経新聞サイトより(2)>
かつては海外旅行に出掛けて米ドル札で払おうとすると、相手方から遮られて「日本円を持っているなら円で払って」と言われたものだ。それは日本の国力が強かったから。あるいは米国がドル安政策を採っていたので敢えて円高誘導していた事に起因するのがホントのところなのかも知れない。
コロナ禍が明けて海外旅行に出ても、もう値下がりリスクのある日本円を受取ってくれる人は既に稀有な存在になっているのではないか。と言うか、円安と原油高で航空券も値上がりしているので、そもそも海外旅行する事のハードルが上がっているのが大きな懸念事項だ。
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為替レートはそんなに大きくブレるものではない。年間の上下動は大きくても15%程度なのでもう振れ切っていると見るのが正しいのかも知れない。ただ、1980年代後半には暴力的に一方向に動いた。人口動態が大きく傾いている現在、もしかしたら国力に見合った調整が過度に働く可能性も否定できない。
さて、海外旅行はともかく、FPとして金融商品に関してどうアドバイスすべきだろうか。
- 外貨建て資産を慌てて円転しない
もし今が円安のピークだと判断しても一気に円転しない事。買いで時間分散を推奨するアドバイスが散見されるが、売りに関しても同様。時間を掛けて円転していけばよい。
また、現在では外貨MMF等でも為替差損益に課税されてしまうので特定の年にドンと利益を計上してしまうのも考え物だ。その観点でも時間分散を考えたい。
因みに外貨MMFと異なり、外貨預り金は特定口座に含まれていないためか、どんなに為替差益が発生しても源泉徴収されないとの情報あり。
- 塩漬け外貨建て資産を売却する
購入時と比べて大きく負け越している外貨建て資産があれば、今回の円安のタイミングで円貨建てで評価すると、評価損が思いのほか縮小しているケースもあるだろう。こうした売るに売れない銘柄を抱えているのであれば、この機会に処分するのも1つの手であろう。
- 主要通貨の動向を把握しておこう
米ドルに対して大きく円安に動いている。長期スパンで他通貨の対円レートの動きを追っていくと、どんな景色が見えてくるだろうか。
<10年前、20年前の為替レートと比べてみた>
ちょうど10年前、2011年末は1ドル78円と過剰な円高局面だったので端的な評価が難しい。20年前と比べると、ドル円相場がほぼ同水準にあり、確かに20年前のレートに先祖帰りしたと解釈する事もできる。
端的に分かる事は、日本円と同じハードカレンシーであるスイスフランから大きく離されてしまった事だ。10年前は1ドル≒1スイスフラン=80円前後だったが、現在では1ドル≒1スイスフラン=135円前後と評価されている。これは「有事のスイスフラン」は昔も今も通じるが、「有事の円」が過去形になってしまった事を意味している。
英ポンドやユーロに対しては米ドルほど急激にレートが悪化しているとも言えない。これはウクライナ侵攻がヨーロッパ経済に影を落としているためなのか。豪ドルも似たようなレンジにいるが、20年前と比べると資源国通貨なので相対的にやや高い位置にある。