H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

資産所得倍増を狙って日銀ETFをバラまくのか

先日「資産所得倍増ってなんだろう」って記事を書いたばかりだ。

<6/8東京新聞サイトより>

これは地味な話を5点ほど真面目に書いたつもりだった。前半2つはNISA、残り3つはiDeCoの問題点だ。

【A】損失が発生したら譲渡損失として認識して欲しい事
【B】ロールーオーバーの手間を改善して欲しい事

【C】非課税と言いつつ受取時には課税される事
【D】退職時に売却を強いられる事
【E】いざと言う時に引き出せない事

https://hassan01.hatenablog.com/entry/2022/06/08/155137

ところが、7/21日経新聞の金融面にどうにも理解できない囲み記事が載っていてビックリ。

日経新聞の日銀埋蔵金の記事>

f:id:hassan01:20220725142827j:image

ここ10年ほどで日銀が買い支えてきたETFが簿価で36.9兆円あり、含み損益がプラス12.6兆円になっていると言う。コロナ禍にあっても相対的に株高なのでこれはある意味で当然の事。

この大金を国民一人当たりに換算すると簿価で29万円、時価で39万円になり、それを国民に無償で配布する案があるのだとか。国が借金を抱えていない健全な姿であればともかく1000兆円超の借金を抱えている状態で、なかなか暢気な検討がなされているもの。啞然としてしまった。

それに、記事でも触れている通り、無償拠出する事で大半の国民がこのETFを永久保有してくれるとはおよそ思えない。投資経験のない人はすぐにキャッシュ欲しさに現金化に走るだろう。そんな売りが30兆円もドカドカと短期間に溢れ出したらどうなるのか。どうすればいいか分からなくて、死蔵されたまま眠ってしまうETFも多いのではないか。しこうした案を真面目に計画しているのであれば、ホントに金融の素人だと思うのだ。

確かに、香港では時価総額の6%に当たる株式を買い介入した後で、トラッカー・ファンドを組成・売買している。ただ、同国で全ての国民にばらまくような愚を演じたとは思えない。折角10兆円もの含み益が出ているのなら、日本も国庫に戻せばいいんじゃないの。

【参考】トラッカー・ファンドの成立経緯に関して、野村資本市場研究所の文章あり

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2001/2001aut21.pdf

これまで出口戦略を明確にしないで日銀が買いまくってきたとも思えない。行内では検討していると信じたい。公募増資の要領と同じで時価から少しディスカウントした価格で売却するのが現実的ではないか。それをトラッカー・ファンドのように小口化して売却するのもいいし、それで売りが膨らむリスクがあるのならindex型の投資信託ETFも扱う投資信託会社に買い取ってもらえば安心だ。

資産所得倍増って造語が昭和の二番煎じで、何かを新しいモノを生み出す印象を与えない。そもそも高度成長期でもない令和の時代に、「所得倍増」を言い出した事に現実感・経済感覚の乏しさを示してしまったと思う。NISAやiDeCoも制度として不完全だけど、おかしな曲解に走らないように一旦この言葉を撤回されるのが最もアリだと思う。