H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

1億円 見知らぬ壁は どこに立つ

あけましておめでとうございます。

今年も弊ブログを宜しくお願い申し上げます。

新年なので景気よく「1億円」や「30億円」などぶっ飛んだお話しから始めさせていただきたく。

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11月の日経新聞に面白い記事が載っていた。まずはそのグラフを見てみよう。

<11/8日経3面より>

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1億円の壁は高い。資産の1億円、年収の1億円どちらも一生お目に掛かる事はできない高い壁だ。でも、俗にいう「1億円の壁」とは更に厳しい、所得1億円を意味する。そこまでは所得の上昇とともに税金(+社会保険料)の負担は高まっていき、負担率28.7%に達する。

ところが、それを境にしてもっと所得が上昇しても、負担率は21.5%(所得5~10億円)、17.2%(所得17.2%)と逆に低下していくのだ。それが「1億円の壁」で、かつてバフェット氏もこの問題を指摘していた。確か超高所得者の社会負担をアップして構わないって主張だったと思う。

でも、累進課税制を採用している日本において、あるレベルを超えると逆累進課税になってしまうのは何故だろうか。

理由は3つある。1つは所得によって税率が異なる事。給与所得や退職所得は総合課税されるが、譲渡所得など一部の所得に関しては分離課税が適用されている。こちらには累進課税が適用されるわけではなく、概ね固定税率だ。有価証券の譲渡所得課税であれば20%(所得税15%、住民税5%)となっている。

土地・建物の譲渡所得課税も同20%(所得税15%、住民税5%)である。但し、保有期間が5年以内であれば短期売買とみなされて高い税率39%(所得税20%、住民税9%)を適用される。それと、土地・建物の譲渡取引に関してはいろいろな優遇税制も用意されているので、そうした控除で課税所得を減額した後での税率適用になる側面も隠されている。

<11/8日経3面より②>

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2点目として、配当所得の扱いだ。確定申告に含める事もできるが、ここはかなり融通が利く仕組みとなっている。20%(所得税15%、住民税5%)の源泉分離課税のまま済ませておけば、それで確定申告を免除される。なので、もし所得を集計して大金になっていたとしても、税率は20%のままで問題ないのだ。

最後が社会保険料について。標準報酬月額に応じて保険料が決められている。ところが上限が定められているので、所得(≒標準報酬月額)があるレベルを超えても一定額に落ち着く。なので、年収1000万円の前半くらいより上のサラリーマンは総じて負担感が軽減されている。

一見不公平に感じる面もあるが、年金制度が世代間の扶助を謳っており、高額所得者に高額の保険料支払いを求めて、将来的に現実感のない高額の年金受給を示すのも非現実的なので筋は通っている。健康保険に関しても、別に高額療養費の補助制度があり、無制限に医療費が掛かるのではなく、セーフガードが設けられているので整合性は取れていると考えられる。尚、上限は健康保険と厚生年金で異なっている。

<参考:日本年金機構のHPより>

この「1億円の壁」の議論は以前から気になるものだったが、2022年12月になりようやく政治の議題に上がって来た。所得30億円以上の人に追加の税負担をお願いすると言うもの。

一度そうした制度を作れば、徐々に網を広げて適用対象者を増やしていく事になるだろう。税金や社会保険の仕組みを押さえておく事は必要だけど、1億円の壁がどこに立っているのか遠すぎて視界に入らない一般庶民にとっては縁のない事だな。

でも、11/8紙面に冒頭のグラフが載っていたのはどうしてなのか。やっぱり政治家のみなさんはその頃から高額所得者を狙い撃ちしようと考えていたのだろうか。それで観測気球を上げて様子をみていたのかも知れないな。

※この記事は2022年11月8日の日経新聞を参照しました。2つの図も同記事より引用。