H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

配偶者居住権について整理する

本日は、CFP試験対策もあって整理しておく。古いFPテキストには載っていなくネット検索してみたので、それを個人的な事情で書いておくもの。その点をご了解下さい。

(1)前提知識

相続財産となるものはザックリ以下の通り。被相続人の給与は銀行振込されるので預金に含まれると考えていいだろう。

預金、有価証券、土地、建物、生命保険(契約者=被相続者、被保険者=他者)

みなし相続財産は次の通り。

退職金、生命保険(契約者=被保険者=被相続人

生前贈与や特別受益で受け取った分も上記に加算する。贈与に関して、相続時精算課税制度を選択したものであれば過去に遡って全て、それ以外のもので特例が適用されていないものは3年前に遡って加算する事になる。

(2)配偶者居住権

父親が亡くなると、母親がそのまま住み慣れた住居に住み続けるケースはごく自然にあるだろう。ただ、法定相続に沿って遺産分割してしまうと、妻が住居(土地と建物)を取得して、その代わり子供に現預金を渡してしまう事になる。結果として、残された妻が現金不足に陥って生活費に苦労する事があってはいけない。

そんな時に使えるのが配偶者居住権だ。所有権と居住権を切り離して、前者を子供が、後者を配偶者が獲得するもの。CFP試験の過去問だったか、その金額は半々に設定していた。いざネット記事を読んでみると、必ずしも折半にするものではなく、居住権の価値は配偶者の平均余命に応じて逓減していき、逆に所有権(利用権)の持ち分が増加していくのだと、理解した。

いずれ配偶者が亡くなった場合の二次相続を考えると、副次的なメリットを得られるケースもある。と言うのも、配偶者居住権として決めた分が所有権が子供に丸ごと移転しているので、相続財産が少なくなってくる。但し、子供が自宅を所有していなくて、かつ親の住居に住む場合には「小規模宅地等の特例」(相続税の計算において地積330㎡までの宅地に関して80%減額できる)が使えるケースもあるため、一概に有利不利を決める事もできない。

この配偶者居住権は残された妻が安心して住み続けられるメリットを得られるが、どのようにその形へ持っていけば良いのか気に掛かる。できれば、遺産分割協議の中で残された家族から自発的にそうした流れが出てくるのがベストだろう。もし、そうならないような懸念があれば、2020年4月以降は遺言書に記載しておく事もできるので大丈夫。

勿論、注意すべき点もある。

・配偶者居住権には登記が必要で、建物の所有者と共同申請する事になる。もし登記しておかないと第三者に対して対抗できない。

・増改築するには所有者の許可が必要。

・住居の一部を賃貸借に利用するにも所有者の許可が必要。

他に細かな点を見ておこう。

誰が固定資産税を払うのか? 土地・建物の所有者に納税義務があるので納税通知書は子供に届く(ようだ)。ただ、生活しているのが親なので実際には親子で相談して支払い方法を決める事になりそうだ。

台風による風水害、地震による損壊が生じた場合、所有者と居住者どちらが負担するのか? ネット検索するといずれの意見も載っていた。

<註>最後の2項に関して、ネット検索ではハッキリとルールを確認できなかった。

※2021.11.17追記:特別受益の持戻し免除について

配偶者居住権は夫が亡くなった後に相続人どうしで権利を整理するものであり、揉める可能性もある。できればそうした懸念は夫の生前に摘み取っておいた方が安心だ。そこで役に立つのが「特別受益の持戻し免除」である。

特別受益とは簡単に言ってしまうと生前贈与された分を相続財産に反映して公正な相続を行うためのルール。で、「特別受益の持戻し免除」とは、生前贈与加算の対象としない事に決めておく事だ。例えば、生前に夫名義の宅地と建物を妻に遺贈する事、並びにそれを持戻し対象外とする事を遺言で宣言しておく事だ。そうすることで、残された妻は安心して住み慣れた家に住み続けられるし、生活費に困らないで済むのだ。