H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

相続税の引き下げテクを探ってみる

本日も、CFP試験対策もあって整理しておくシリーズのパート4。個人的な事情で書いておく点をご了解下さい。

相続税計算の仕組みが分かると、自分で相続財産を貰える訳でもないのについ「どうしたら節税できるんだろうか」と考えてしまう。自分には縁が無い事でも、顧客から相談を受けた場合に備えてって事なのか、CFP試験では「xxxしたら課税金額をいくら引下げられるか?」って設問が載っている。CFP試験が民間資格と言えども、これにはちょっと驚いた。

いきなり話が脇道に逸れるが、以前に読んだ小説「プライベートバンカー」では、5年間(現在では10年間に延長されている)海外に滞在して晴れて非居住者になるのを今か今かと待ち焦がれている金持ちが描かれていた。

でも、隠れるように東南アジアで暮らしていて何が楽しいのかサッパリ判らなかった。まず言葉で疎外感を味わうし、食べ物が珍しいのは最初の内で5年も我慢するにはキツ過ぎる。彼らに近づくプライベートバンカーの姿もえげつないと感じたのを想い出した。そうしたダークな話は別として学んだ事を整理してみたい。

さて、正規の課税対象額引下げロジックを復習する意味で、以下にいくつかの策を述べていく。ちょっと打算的な記事になってしまうが、そこはご容赦下さい。

 

【対策1】人的控除を拡大する

これは即ち、法定相続人を増やしておくって事であり、養子を増やす事だ。養子は実子の有無によって1~2人まで認められている。人を増やす事で2つのメリットがある。一つは基礎控除額を1人につき600万円を増やす事ができる。また、被相続者を被保険者とする生命保険に契約した場合、1人につき500万円の控除を増やす事ができる。

CFP試験の過去問を参照すると、養子の候補になるのは孫、配偶者の連れ子、子供の配偶者などだ。いくら試験問題とはいえいろいろなパターンが現実的にあるのだろう。

 

【対策2】相続財産の評価額を減らす

現預金が100あった場合には額面通りで評価される。それに対して、不動産は固定資産評価額で構わないので、時価に対して7割程度に設定されているのでオトクになる。更に続きがある。土地を賃貸借契約で誰かに貸しておくと、借地権比率に応じて減価する事ができる。自用地(自分の土地)に賃貸アパートを建てて貸しておけば、恒常的に空室になっている部分を除いて借家権比率に応じて減価する事ができる。

これらは都心部や田舎の土地持ち農家でよくやられている手法なのだろうが、試験勉強して見る事で初めてそのロジックを理解できた。勿論、相続税対策として有効なのは判るが、アパート建設にどの程度自己資金を使うのか、金利負担に耐えられるのかなど、キャッシュフローを冷静に試算しておく必要がありそうだ。

資産評価を低減させるには生命保険も使うことができる。家族を被保険者にした契約を結んで、自分が保険料を支払っておく。その場合、保険支払いは未だ実行されていないので生命保険を解約返戻金(+剰余金分配額+前納保険料)で評価する事になる。一般的に解約返戻金は保険料の70~80%に留まるので減価できる仕組みだ。

 

【対策3】贈与を活用する

一般的なのは、基礎控除が110万円ほど適用される暦年贈与を積み増していく事だ。婚姻関係20年以上の配偶者への贈与であれば、配偶者の住宅(若しくは住宅購入のための資金)を2000万円まで非課税にできる制度がある。しかも基礎控除の110万円も使うことができる。

他にも、贈与特例は3つほどある。これらは贈与者や受贈者の年齢・所得に制限があったり、金額上限がバラバラでなかなかスンナリと覚えにくいものだ。ただ、ライフステージのそれぞれの段階で効率的に活用する事で相続税を圧縮する事ができるのでチェックすると良いだろう。

直系尊属から住宅取得資金等資金の贈与
・教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
・結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

尚、相続時精算課税制度は節税としての意味はないが、課税時期を繰り延べる事で結果として相続資金を早めに有効活用する事はできる。

 

【対策4】相続のルールを押さえておく

相続は世代間のリセットとも言えるだろう。なので、「3代経過すると財産がゼロになる」なんて言葉もある。それを緩和するためには、1世代飛ばして法定相続人以外の孫に贈与・遺贈しておく事も税金を軽減する智恵になる。別に贈与税を支払う必要はあるものの、もし大金がある場合には有効なのだろう。事実、そんな過去問もCFP試験の前に解いてみた。

稀なケースながら、①法定相続人でない人、②法定相続人だが相続放棄して遺贈も受けていない人に生前贈与しておく事で、生前贈与の加算を回避できる。

他に相次相続があった場合にも一定の税額控除の仕組みが用意されている。

 

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以下は余談になる。CFPの勉強をしてみると、贈与の特例があまりにも多い点が気になる。自分がそれを利用できる立場にあれば嬉しいけど、そうでもない。それなりの金融資産がないと贈与の特例を受けるにも受けられない。2021年10月の衆議院議員選で「金融資産課税強化」の論調が出てきたが、金融資産は譲渡所得だけでなく利子所得も含まれてくるので、今のような低金利時代だと意識する事もないが、銀行利息も20%課税から更に税率が上がるのが庶民も一律に影響してくる。それに対して、贈与税の非課税特例は限られた人々しかその恩恵を受けられないものであり、こうした箇所から見直していくのが筋ではないだろうか。

前年より自民党にて相続税贈与税の一体化が議論されている。そのため、例えば暦年贈与を直近3年間ではなくもっと長めに生前贈与加算する(のでは)とか、相続時精算課税制度に1本化する(のでは)と言った話が新聞・雑誌などを賑わしている。但し、2021年11月末時点で相続税贈与税の見直しで決定した事柄はない。

【2021.12.7追記】対策4に関して言葉を補記した。また相続・贈与税の今後の見通しに関して最終段落を追加した。