H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

新NISAを始めるに当たって

新NISA制度が始まったこのタイミングで、とかく株高が続いている。以前から継続投資している人にとってこの水準は半信半疑でもありつつ、それでも嬉しい話だ。

ただ、新NISA導入に合わせて今年からガッツリ投資を始めた人は慎重にしなくてはと思うのだ。制度説明は巷に溢れているので省略するとして、その辺りに触れてみたい。

(1)80年代末の株高が再来したのか

日経平均36000円台は30年以上前から投資していた人を除くとまずは経験した事のない真空地帯である。

バブル当時は高PERを気にしないで、確かに4万円直前まで駆け上がった。日経平均3万円台がずっと長いこと続いていたような気もするが、それはバブルの渦中で踊らされていたからであって、長期のチャートでみればあくまで一瞬のことだった。

主力銘柄は3万円超の水準ではピークを付けた後で大して上昇していなかったように思う。年足チャートを探してみれば、日経平均ピークの1989年ではなく1987年に最高値を更新した銘柄が多いことも確認できるはずだ。代わりに最終局面で上昇をリードしていたのは日経225銘柄の中でも品薄株だったと、どこかで読んだ記憶がある。

<過去30年超の長期チャート> 

※出典(2023.5.19付け日経HPより)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1798V0X10C23A5000000/

(2)令和の賃上げと収益拡大

それに対して令和の株高は、業績の裏付けを伴っており低PERなので問題ないとの解説がある。NYダウも当時の10倍超でありその比較感からも問題ないかも知れない。

金融面でのトークは正しそうだ。では、政治や経済の面でどうだろうか?

経済のトリクルダウンが起きると信じている、あるいは信じ込ませようとしているアベノミクス信奉者が力を持ってきたためなのだろうか。安倍派一強の時代が続いていたので、そんな呪縛が今の政権にも引き継がれているのかも知れない。でも、トリクルダウンとはあくまでおこぼれの配分であって、2016年頃にピケティが言ったことには敵わない。確か労働収益は投資収益を上回らないとかそうしたニュアンスだったと記憶している。

岸田政権も株高に代わる目玉政策がないのでお題目として掲げ続けているのだろう。だいたい「物価上昇を上回る賃金上昇」って標語も理解できない。サラリーマン感情で同調することはできても、冷静に考えれば労働者への分配率を恒常的にアップさせる事はできないだろう。

日経新聞のコラムにもチクリと書いてあったように、売上規模の拡大が見込めない以上は「生産性の向上」が持続的な賃上げの必須要件になるだろう。でも、巷の諸説によると日本の生産性は各国と比較して高いとは言えない。労働時間こそ長いもののヤラサレ感が漂っているため、生産性の向上を伴っているとは言い難い状況だ。トヨタ自動車の関連会社で品質に関わる不祥事が続いているのも、モノを言えない不合理な環境でノルマ重視(利益積上げと納期厳守)が至上命題とされてきたためなのかも知れない。

他方で「働き方改革」とか「多様性の時代」ってワードで会社は若者に寛容になってきている。リフレッシュした良い環境で残業なく働ければ生産性も上がるのか、ガッツとガンバリで働かなくてもスマートに収益は底上げされるのか、この辺りは自分が若者世代ではないのでなんとも評価しにくいところだ。

(3)株高タイミングで新NISAスタート

もし現在の株高が企業収益の拡大と無関係であれば、買い手を募らないと株価を維持できない。企業収益の拡大が相場上昇のベースにあるにしても、値上りが急激、もしくは過剰であればそれはバブルと表現してもいいのだろう。

残念なことにバブルの渦中にいる時には客観的に「高い」と感じることはなくて、祭りが終わった後で「実はあの時……」と言うのが常だろう。それは1980年代の歴史が教えてくれる。リーマンショック後に米国の金融機関トップが言っていた「音楽が鳴っている間は踊り続けなければいけない」という強迫観念もあるだろう。

2023年後半にどこかのネットサイトで読んだ記事を思い出した。出典を記憶していないが、「岸田政権が持続的な株高の演出を期待して新資金の流入を企図してNISAの投資上限を引き上げたのでは」との論調だった。確かに新NISAの年額360万円は旧NISAの3倍だ。しかも素人の資金はブームに乗って投資の世界に吸い込まれる可能性がある。

昨年後半、マスコミの論調はほぼ100%が新NISA賛美だった。上記コメントはごく少数派の意見であり、その頃は3万円台の株高がずっと続くのか半信半疑だったので、あまり気にも留めなかった。でも、新NISAスタート月に特定の投資信託にドッと資金流入したとか、1月の株高が日経平均で2800円、月末の平均株価が36000円台って高値示現は妙に符丁が合っているように思い返したのだ。

(4)私のNISA投資方針

これは従来と変わりない。個別株でいく。昨年は珍しく成長株を買って30%くらい下落してタイミングが悪かったと反省している。業績好調な下落トレンドを甘く見ていたって所だ。今年はズルズル沈み込んでいる重厚長大の大型株を拾っておこうと考えている。2~3回に分けて買っていきたい。

ただ、新NISAには「つみたて投資枠」なる余計なものが出来てしまったのが面倒くさい。投資信託とかETFとか基本的には嫌いなので、なるべく関わらないようにしてきた。一般的な商品で唯一保有しているのはiDeCo投資信託だ。iDeCoは会社を辞める時にDC運用していたモノを移管するタイミングで全額解約されてしまった。それを少しずつ投資商品に戻している。それくらいのものだ。

年360万円の投資枠をまるごと個別株に使えばいいじゃないかと思う。それはそれとして、折角の非課税枠ができるのでゆっくり投資信託でも探してみよう。こちらは日経平均が下がったタイミングで始めればいいので秋ころで構わないんじゃないか。