具体的な商品名はさておき、某生命保険会社の外貨建て終身保険商品の加入についてサウンドを受けた。
自分なら買うか? そう問われたら買わないだろう。自分としてはこうした商品を購入したことがない。運用は自分で決める方が楽しいし、海外旅行の出発前に損害保険会社の保険に加入するくらいなのだ。親が相続税非課税枠に使えることを理由に勧められたのを後で知ったくらいだ。
ただ、生命保険や投資に対する向き合い方は個人によって千差万別。リスクに対する意識、ポートフォリオの全体構成によって回答はそれぞれに異なってくるので、ここではFPとしてフラットに整理していく。
(1)外貨投資すること
この円安の時期に始めることは躊躇するものの、ある程度の割合まで外貨建て資産に投資することは必要だと考える。その割合はその人のリスク許容度によるので一概になんとも言えない。
1ドル110円の頃に投資していた人であれば、直近の150JPY/USDで円為替差益だけで+36%になっていただろう。逆に現在の1ドル150円で投資して110円に戻れば27%の損失を被ることになる。いずれにせよ、為替相場は1年で15%前後動くことを想定しておくべきだろう。ただ、長期になればなるほど利息収入が加算されるので平均購入レートは改善していくと考えればいい。
多通貨から選べる場合にはUSD、AUD、EURが挙げられる。TV等で情報量が多いのはUSD、相対的に変動幅(volatility)が低いのは総じてAUDである。
<ネットで見つけた米ドル画像>
(2)長期で資金を固定すること
終身保険商品なので、長期間そのお金が拘束されてしまう。流動性を確保する観点では劣る。非課税枠の利用をアピールされてもそのメリットを享受できる人は限られているだろうし、流動性とトレードオフの関係になることに注意したい。
(3)目標設定して円転する機能
外貨建てで運用するが、あらかじめ目標ラインを決めておき、それを達成したら円建てに振り替える仕様になっている。
この商品設計は一見すると嬉しい。ただ、現在の外貨建て金利水準(4~5%)を前提にすると、どの程度に設定すべきか悩ましいものがある。仮に解約手数料が10年間は必要だと仮定すると単利5%×10年=50%、そこに為替変動が加わるのでそのレベルより上に設定しておいた方が良さそうだ。ただ、今後10年の為替変動を誰も正確に予想できないので、もし加入するなら複数本の契約に分けて、別に目標ラインを決めておくなど防衛線を張っておく手もある。
【註】以下について詳細情報をパンフレット等で確認していないので、あくまで汎用的な記述となっている。
・一旦決めた目標ラインを随時変更できるものか
・解約手数料が運用スタートから何年間まで控除されるのか。また何%なのか
(4)手間をどう考えるか
生命保険会社の商品を買うのはラクである。なので、その運用の手間がある分だけ手数料を負担していると考えるのが自然だ。現在、外貨建ての1年定期であれば4~5%の利率が提示されている。この状況は20世紀には当たり前だったけど、最近では2023年に入ってからようやく正常化してきたもので、日本はまだそのレベルに戻れていないだけ。
例えば1年定期を継続することで今後の超金利を享受できるかも知れないし、また超低金利になって喘ぐことになるかも知れない。そこは、固定金利と変動金利を比較すればいい話であって、敢えて生保商品に拘泥することではないとも言える。
(5)大人の事情を踏まえると
生命保険ってビジネス(B to B)では必要な要素だろう。他方で、個人の場合だと勧誘されるのではなく、自分から主体的に加入する人ってどれくらいいるのだろうか。
FP資格を保有する保険会社の人もいるので、もしかしてお付き合いで契約する場面もあるのではないか。仮に相続税の非課税枠(500万円)を理由に勧められたとしても、それを意識して金額を決める必要はない。最低1万ドルなら米ドルで150万円超、それでもう十分な大金になる。
あくまでもご自身の保有資産の中でこの商品に何割くらい預けるのが相応しいのか、比率で考えた方がいい。最初にドンと契約して減らすよりも、先ずは控えめな金額で契約して様子をみる。ホントにメリットあると思えば後で追加すればいいだけの事だ。