H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

累進課税と一律負担は妥当か

日経新聞に面白いグラフが載っていたので引用させてもらう。確か3面か5面くらいだったと思う。所得階層別の税&社会保険負担割合を示したグラフだ。グラフのタイトルには「所得に対する社会保険料の負担割合は低所得層ほど重い」と書かれている。なにかと紛らわしい年収と所得の違いについては省略するので、気になる方は年末調整で行われる給与所得控除の金額を参照。

<4/9日経>

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(1)累進課税制度はホントか

これを見て分かるのは、税・社保など負担する内訳こそ変われど所得階層が低くてもそれなりの負担はあり、所得階層が上がってもさほど負担割合は変わっていないこと。

はて、日本は累進課税が採用されているのでもっと急カーブを描いて負担があがるのではないか。最初は私もそう思った。かつてバフェット氏が「富裕層にもっと課税して構わない」旨の発言をしていた事もあったが、あの意味は分かるようでいて分かりにくい。

米国のことはさておき、日本ではおおよそ以下のような制度設計になっている。

所得税: 累進課税
住民税: 一律10%(超過課税を除けば国内どこでも)
社会保険: 定率。(健保・厚保)

健康保険・年金ともサラリーマンの負担には上限があるので、一定の標準報酬月額を超えると保険料は頭打ちになる。上のグラフで読み取ると、所得70万円でも700万円でも12%くらいだが、それ以上の階層になると徐々に社会保険料の負担が薄くなっていく理由はコレ。

 

(2)国民年金は定額制

国民年金加入者も同様で、所得に拠らず一律月16000円台になっている。なので、所得増加に伴う負担感の軽減はもっと急激に落ちていく。

しかも60才まで支払ったら終わりだと信じていたこの制度を65才まで延長しようと納付期間の延長(20才~60才を65才までの45年へ)が議論されている。仮に、月1.6万円とすると5年延長で96万円の負担増になる。

<ネットで見つけたテレ朝サイトの画像>

 

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※出典

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900000812.html

これは定年を60才から65才へ移行していく、更には将来的に70才へ延ばしていく中で妥当な動きとも云える。年金受給の開始年齢を70才よりもっと先、75才まで繰り下げて欲しいと既に制度変更されている。WPPの最初のP(private pension)であるiDeCoの積立期間を60才から65才へ延長する動きも同じシナリオに沿っているものだ。ただ、TV報道を聞いていると「年金受給額の不足を懸念して」と前置きされると些かズレているのではないかと疑ってしまう気持ちもある。

 

(3)少子化対策の負担金

少子化対策に必要なお金を社会保険料として追加徴収すると言う。こちらも月500円がホントなのか、「負担が増えない」説をどう解釈すればいのか最近のニュースで時々出てくる話題だ。

所得税累進課税で所得が増えるにつれて税率も上がっていく。それに対して、住民税は定税率負担であり、社会保険料も上限付きの定率なので、たかが500円や1000円と言っても、低所得者ほどその負担は大きくなる。

岸田総理はその辺も分かっていて社会保険料に上乗せしたんだろうか? 大企業も社会保険料の折半(事業主も同額負担)なのを知っていて、賃上げ余力もあるので僅かな人件費負担なら大丈夫と判断していたのだろう。

 

(4)ふるさと納税制度は国として成功

ちなみに今月の日経記事にはこんな事も書かれていた。

ふるさと納税の付替をやっているのは15%くらいに留まる
・住民税非課税世帯が1500万ほどあるが、正確にcountできていない

2つ目に関してはコロナ給付金の支給議論で問題になっていたが、ここでは深堀りしない。以下は1つ目に関してチェックしてみよう。

申告手続きを忘れているだけなのか、そもそも所得税を大して納める必要がないにも拘わらず返礼品欲しさに「ふるさと納税」する奇特な人が多いって事なのか、ハッキリ読まなかったのでここでは断定できない。

所得税の納税税率は5%~45%まで7段階ある。いつだったか最低税率5%の人が最も多いと読んだ記憶がある。以下のグラフはたまたま見つけたものだが、この資料によると1世帯当たりの所得中央値は427万円で、所得控除を加味すると330万円以下になって税率はおそらく10%だろう。ここで言う世帯とは高齢者世帯を含めているので一般的な20~50代の労働力人口に限定した平均や中央値がいくらなのかハッキリしていない。

ちなみに高齢者世帯の1世帯当たりの所得中央値は244万円であり、所得控除を加味すると195万円以下になって税率はおそらく5%に留まるだろう。

<所得階層の分布>

※出典

https://gooddo.jp/magazine/poverty/senior_proverty/5216/

ここまでみていくと、もしや「ふるさと納税」に踊らされている人が多いのかもしれない、と推測できる。であれば「ふるさと納税」制度を作った国の思惑が成功したのではないか。

 

※4/20:一部加筆しました。

祝、日経平均38915円の歴史的高値を突破

2024年2月、日経平均がバブル末期の1989年年末に付けた最高値を34年振りに更新した。もうこれは素直におめでとう! と言いたい。

<2/23日経新聞1面>

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1面の70年チャートを見ると、戦後のほぼ半分をかけて上昇した高値まで再び34年の月日をかけた事が分かる。90年代に入ってから当時、野村総研リチャード・クー氏が「バブルの高値を抜くまでには相当の売買高をこなす必要があり30年くらい掛かるだろう」と話していたのを覚えている。でも、まさかホントに34年も要するとは。

<同2面>f:id:hassan01:20240229061947j:image

1989年、最安値を付けた2009年、直近2023年の指標を対比させた2面の表もそのまま転載させていただいた。

この30余年で名目GDPに大差はなく、企業業績と為替相場、NYダウ、外国人投資家の動向などに揉まれて相場が持ち直してきた。ここ20年くらい配当金への分配は急激にupしてきたものの、それでも企業の内部留保は圧倒的に厚くなった。

※参考:最近TVで見た指標(単位:兆円)

      2001年  2011年  2021年

配当支払    3.1      8.7   22.2

設備投資   20.4    18.2   21.2

内部留保の蓄積は表の下にある「海外の稼ぎ」が10倍の33兆円に急拡大している事とも関係していると言えそうだ。なので、国内従業員の賃上げが持続的なものになるのか、微妙でもある。この表にも「賃金上昇はインフレに劣後」と書かれている通り、やはり「物価上昇を上回る賃上げ」って言葉が空虚に響く。

この表に載ってないが市場平均PERは大幅に低下しており、業績水準と比較したマーケットの過熱感もないと考えていい。もちろん、短期間で5000円程度いいピッチで上昇してきたので、スピード調整は避けられないだろう。

はてここからどう対処していくか。マイナーな業種が大幅高を演じていないので直近すぐコケる事は考えにくい。PBR1倍割れの銘柄もまだまだ多い。

米国株は堅調なのだろうが、GAFAMを除いた指標がそれほど急カーブでない事には注意しておきたい。

ただ、為替相場は常に読めない。日銀の金利判断は緩慢だろうが、一旦始まれば逆回転のリスクはある。中国マネーの流入は短期的なものだろう。

新NISAで素人が大量にマーケットに参入してきた影響がどんなタイミングで出てくるのか、ネットでは数年のスパンで攪乱要因になるとの見立てもあったけど、こちらもやはり読みにくいファクターだ。

新NISAを始めるに当たって

新NISA制度が始まったこのタイミングで、とかく株高が続いている。以前から継続投資している人にとってこの水準は半信半疑でもありつつ、それでも嬉しい話だ。

ただ、新NISA導入に合わせて今年からガッツリ投資を始めた人は慎重にしなくてはと思うのだ。制度説明は巷に溢れているので省略するとして、その辺りに触れてみたい。

(1)80年代末の株高が再来したのか

日経平均36000円台は30年以上前から投資していた人を除くとまずは経験した事のない真空地帯である。

バブル当時は高PERを気にしないで、確かに4万円直前まで駆け上がった。日経平均3万円台がずっと長いこと続いていたような気もするが、それはバブルの渦中で踊らされていたからであって、長期のチャートでみればあくまで一瞬のことだった。

主力銘柄は3万円超の水準ではピークを付けた後で大して上昇していなかったように思う。年足チャートを探してみれば、日経平均ピークの1989年ではなく1987年に最高値を更新した銘柄が多いことも確認できるはずだ。代わりに最終局面で上昇をリードしていたのは日経225銘柄の中でも品薄株だったと、どこかで読んだ記憶がある。

<過去30年超の長期チャート> 

※出典(2023.5.19付け日経HPより)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1798V0X10C23A5000000/

(2)令和の賃上げと収益拡大

それに対して令和の株高は、業績の裏付けを伴っており低PERなので問題ないとの解説がある。NYダウも当時の10倍超でありその比較感からも問題ないかも知れない。

金融面でのトークは正しそうだ。では、政治や経済の面でどうだろうか?

経済のトリクルダウンが起きると信じている、あるいは信じ込ませようとしているアベノミクス信奉者が力を持ってきたためなのだろうか。安倍派一強の時代が続いていたので、そんな呪縛が今の政権にも引き継がれているのかも知れない。でも、トリクルダウンとはあくまでおこぼれの配分であって、2016年頃にピケティが言ったことには敵わない。確か労働収益は投資収益を上回らないとかそうしたニュアンスだったと記憶している。

岸田政権も株高に代わる目玉政策がないのでお題目として掲げ続けているのだろう。だいたい「物価上昇を上回る賃金上昇」って標語も理解できない。サラリーマン感情で同調することはできても、冷静に考えれば労働者への分配率を恒常的にアップさせる事はできないだろう。

日経新聞のコラムにもチクリと書いてあったように、売上規模の拡大が見込めない以上は「生産性の向上」が持続的な賃上げの必須要件になるだろう。でも、巷の諸説によると日本の生産性は各国と比較して高いとは言えない。労働時間こそ長いもののヤラサレ感が漂っているため、生産性の向上を伴っているとは言い難い状況だ。トヨタ自動車の関連会社で品質に関わる不祥事が続いているのも、モノを言えない不合理な環境でノルマ重視(利益積上げと納期厳守)が至上命題とされてきたためなのかも知れない。

他方で「働き方改革」とか「多様性の時代」ってワードで会社は若者に寛容になってきている。リフレッシュした良い環境で残業なく働ければ生産性も上がるのか、ガッツとガンバリで働かなくてもスマートに収益は底上げされるのか、この辺りは自分が若者世代ではないのでなんとも評価しにくいところだ。

(3)株高タイミングで新NISAスタート

もし現在の株高が企業収益の拡大と無関係であれば、買い手を募らないと株価を維持できない。企業収益の拡大が相場上昇のベースにあるにしても、値上りが急激、もしくは過剰であればそれはバブルと表現してもいいのだろう。

残念なことにバブルの渦中にいる時には客観的に「高い」と感じることはなくて、祭りが終わった後で「実はあの時……」と言うのが常だろう。それは1980年代の歴史が教えてくれる。リーマンショック後に米国の金融機関トップが言っていた「音楽が鳴っている間は踊り続けなければいけない」という強迫観念もあるだろう。

2023年後半にどこかのネットサイトで読んだ記事を思い出した。出典を記憶していないが、「岸田政権が持続的な株高の演出を期待して新資金の流入を企図してNISAの投資上限を引き上げたのでは」との論調だった。確かに新NISAの年額360万円は旧NISAの3倍だ。しかも素人の資金はブームに乗って投資の世界に吸い込まれる可能性がある。

昨年後半、マスコミの論調はほぼ100%が新NISA賛美だった。上記コメントはごく少数派の意見であり、その頃は3万円台の株高がずっと続くのか半信半疑だったので、あまり気にも留めなかった。でも、新NISAスタート月に特定の投資信託にドッと資金流入したとか、1月の株高が日経平均で2800円、月末の平均株価が36000円台って高値示現は妙に符丁が合っているように思い返したのだ。

(4)私のNISA投資方針

これは従来と変わりない。個別株でいく。昨年は珍しく成長株を買って30%くらい下落してタイミングが悪かったと反省している。業績好調な下落トレンドを甘く見ていたって所だ。今年はズルズル沈み込んでいる重厚長大の大型株を拾っておこうと考えている。2~3回に分けて買っていきたい。

ただ、新NISAには「つみたて投資枠」なる余計なものが出来てしまったのが面倒くさい。投資信託とかETFとか基本的には嫌いなので、なるべく関わらないようにしてきた。一般的な商品で唯一保有しているのはiDeCo投資信託だ。iDeCoは会社を辞める時にDC運用していたモノを移管するタイミングで全額解約されてしまった。それを少しずつ投資商品に戻している。それくらいのものだ。

年360万円の投資枠をまるごと個別株に使えばいいじゃないかと思う。それはそれとして、折角の非課税枠ができるのでゆっくり投資信託でも探してみよう。こちらは日経平均が下がったタイミングで始めればいいので秋ころで構わないんじゃないか。

金利が付く時代が戻ってきていた

はや1月も終わりですが、あけましておめでとうございます。

今年も弊ブログを宜しくお願い申し上げます。

いろいろあって、やや投稿間隔が空いてしまいました。

2023年の投資収益の振返りとか新NISAに関しての考えなど書きたいテーマはあるのですが、年初は軽い話題から書きます。3項目ありますが、いずれも外貨預金に関するものです。

(1)金利の付く世界

米国など先進国の金利が上昇して既に金利低下に向けた議論が出ている昨今、今更ながらに金利のある世界が戻ってきている事に気付いた。確かにこの20年、国内では円に金利が付利されていない。それが当たり前になってしまったので、大学生が預金金利が付く事をそもそも知らない世代になってしまったとか。

日本円はまだ0.1%とか0.002%など低空飛行が続いているので、実感としてはまだ失われた時代から抜け出せないでいる。

ところが、外貨預金の残高をみるとそうでもない。年末の残高を確認してみると、おやっ、金利が付いているじゃないか、と当たり前の事に驚いてしまった。確かに米国の金利上昇が一般の少額預金者の残高にもしっかり波及してきた事を実感させてくれた。

付利された金利は銀行や預け入れ時期の問題もあって不公平になるので、現時点で金利を比較してみた。

以下はいずれもUSDの1年定期金利

CITIBANK  4.80%
某ネット銀行 4.71%
都市銀行  0.01%
地方銀行  0.85%

4行のうち上2行については5%弱の金利が付与されるので、これが数年間維持されるのならば、敢えて株式や投資信託でリスクを取る必要すらないように思う。勿論、円安局面にあるのでこれから追加で外貨投資するにはリスクの見極めが必要。それでも、長期ほったらかしスタイルを取れるのであればリスクは低いと言えそうだ。

問題なのは旧来の2行。片や4.8%の預入金利を提示できる銀行があるのに、どうして0.01%とか0.85%に甘んじていられるのか不思議だ。これは為替リスクを銀行サイドで鑑みて販売を控えているって事なのか。いやあ、そんな親切心があるとも思えない。

であれば販売戦略なのか、だとしたらそれは国内顧客に対するものであって都銀の海外支店でも同様の戦略が通じるんだろうか?

あるいは、店舗運営コストが嵩むので日本円と同様に外貨でも預金者に付利する余裕がないのだろうか? 確かに旧来の銀行で外貨預金するヒトは少ないだろう。だからこのアンバランスが問題になっていないのかも知れない。けど、こんな事を続けていたら、ただでさえ支店の店舗がスカスカなのに更に預金者が逃げてしまうのではないか。

そんな事を心配した2024年の初めだった。

<米ドル>

(2)円安時代にトクする方法

コロナ禍でずっと海外に出られていない。その間に気が付けば1ドル110円が当たり前だった世界から、1ドル140~150円の円安へと一変してしまった。

円安で海外旅行するとモロに物価高を意識する事になりそうだ。

ただ、外貨口座を持っていると、もしかしたら海外で有利になる事もありそうだ。円高の頃に外貨預金で預けてあったモノは多少なりとも金利が付くようになった。しかも、カード決済によっては自分の外貨預金口座から現地で外貨支払いできるものがある。

であれば、新たに円をドルに両替することなく円高時代に両替したものをそのまま使ってしまえばいい。為替評価益をそのまま為替実現損益にシフトできる筈だ。

まだトライしていないけど円安局面はまだ当面続きそうなので、この夏にチャレンジしてみたい。

(3)外貨預金とMMFの違い

ずっと放置していた外貨預金を円転した。僅かな金額でも為替差損益が得られるのは嬉しい。銀行から渡された計算所を見てふと疑問に思った。あれっ、利息に関して20%課税されているけど、為替差損益については無罪放免のようだ。為替差益に課税されなくていいのか?

無税の方がありがたい。でも、証券口座のMMFだと、確か証券会社が買いコストを把握していてそれより円安だと20%課税されていた。所得としては譲渡所得に分類される。

もし銀行預金と証券口座で課税齟齬があるのなら、債券分配金より銀行金利の方が多少低くてもトクなんじゃないか。円安局面でそんな小さな違いに気付いた。

 

【2024.1.29補足】FP1級の身としては正確を期すべく、為替差損益について確認しました。
外貨MMFは譲渡所得として源泉徴収される。それに対して、外貨預金の元本の為替実現損益は雑所得扱いとなる。為替予約していれば源泉分離扱いとなり、為替予約していないopenなものであれば総合課税となる。なので、一般的な外貨預金は銀行で払戻すタイミングで課税されていなかったのだ。
ちなみに一時所得にあるような特別控除50万円は、雑所得には設けられていない。

ETF投資って何が楽しいのか?(パート3)

このタイトルで書き始めてハッとした。後で気が付いた事だけど「ETF投資って何が楽しいのか?」ってタイトルで2回も投稿していたのだ。ブロガーとしてはあまりにアバウトで失格だけど、やっぱりずっと引っ掛かっているテーマなのだ。

※ネット画像

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ちょうど先月、都内某所で投資を語るセミナーがあり、ETF信者があまりに多いのに接してうーんと唸ってしまったのだ。主催者も個別株好きだが、受講者の殆どはETF好きが集まっているようだった。なぜ個別銘柄を選んでそこに賭ける気持ちが芽生えないのだろうか。そんな根本的な疑問はあるんだけど、そうしたインタビューもできない。なので、改めてこのテーマで書き足しておきたい。

私個人は旧来の投資信託ETF(上場投資信託)を殆ど利用していない。個別銘柄で勝負するスタイルが好きだ。でも、市場平均が上昇を続けている現下のマーケットだと、あまり細かい事を考えないで素直に市場平均に投資していく事でそれなりのパフォーマンスが上がっている。それがあんまり面白くなかったので、否定的なタイトルで書いてしまったのだ。

(1)以前の投稿を振り返る

【初回】2020.8投稿の要旨

・(投資先企業や投資主体者の)顔が見えない投資はイヤ
・値動きのダイナミズムがない
・達成感がない

【パート2】2021.1投稿の要旨

・楽しくないでしょ
・主体性がない
・市場平均が大きく下落した時の対応力があるのか
・投資開始タイミングによる違いに影響してしまう

(2)敢えてETF投資のメリットを考えてみよう

もしFPとして活動していくなら、こうした流行を否定してばかりもいられない。なので良い点を挙げてみよう。

ETF投資は手が掛からない
・環境変化に対応してくれる
・売買タイミングを考えやすい(それすら放棄して永久積立もありえる)
・市場参加者の中で平均的なパフォーマンスを上げられる(負けにくい)
・個別株の不祥事・倒産リスクを回避できる

ここに挙げた事それ自体は正しい。

(3)拱手する局面に陥ったら

ちょっと立ち止まってみよう。でもね、と問い直す事も必要じゃないか。手が掛からないって言うのは放置しているに過ぎない。投資主体としてあまりに引き過ぎている。これで大丈夫なのか。

相場の下落局面ではどうだろう。全体が下落したらETF(普通のブル型indexの場合)にはそのまま値下がりしていくだけだ。拱手したままマーケット全体の回復を待つしかないのだろうか。

膠着局面ではどうだろう。NYでも過去には10年スパンの停滞時期はあった。こちらも停滞している様をそのまま引き継いでいくだけだ。でも、自分で個別株を選んでおけば、下落して自己責任を問われても、マーケット全般が不調の時に、自分だけ上昇銘柄を掴めるかも知れない。そうしたチャンスを積極的に引き寄せられる事が個別投資の醍醐味だと思う。

ベア型のETFやオプション戦略に則したETFも確かに存在する。でも、ベア型はインするタイミングを計るのが難しい。私もそうしたモノに手を出した事があるが、先物でヘッジする以上は保険料相当が持続的に必要になり、商品特性を理解していないと手を焼く。インデックスの2倍型(ダブル)も同様で、市場は日々上下動を繰り返していくので、想定通りに基準価格が上昇する訳ではない。

(4)軍需産業への投資

アンチETF路線でもう1点追加するとしたら、銘柄を主体的に選べない点がやはり問題になる。2022年のロシアによるウクライナ侵攻の展開を見て改めて思うのは、ETFで市場まるごと投資対象にしていると、結果として軍需・防衛産業を応援する事にも繋がってしまうのが引っ掛かる。

口では「平和な日本」を謳歌しておいて、その裏で資本主義の仕組みを使って軍需産業に加担しているのは矛盾している。

具体的にはレイセオンロッキード・マーチン等だ。航空機エンジンのユナイティッド・テクノロジーズや宇宙産業を兼営している会社もあるから選別するには厄介だ。

【参考】過去の2本の記事

hassan01.hatenablog.com

hassan01.hatenablog.com

自分が選んだ投資スタイルでポートフォリオが作られていく

ポートフォリオはアセット・アロケーション(資金配分)と言い換えてもいい。たくさんある卵を1つの籠にまとめて入れておかないように分散する。でもその配分のやり方は人様々だろう。

「投資収益の93%はアセット・アロケーションで決まる」と聞いた事がある。一度その根拠を調べてみたいと思っているのだが、怠慢でまだチェックできていない。

(1)4分法

まずは分類からして議論がありそうだ。ここでは金融資産に絞って4分法(日本と世界、株式と債券)から見てみよう。GPIFなど標準だと四等分が一般的によく出てくる。

年令が進むにつれて少しずつリスク資産の割合を落とすべしとの通説もある。確かにそうだけど、海外で金利上昇局面に入っても日本はビクとも動かない。こうなると、安定性だけでなく、稼ぐ力Earning-Powerも意識しなくてはいけない。

私は以前にDC運用していたが解約時に全て現金化しており、現在はiDeCoで再構築中なので、かなり保守的な運用になっている。ただ、DCを止めたのを機に債券運用を外す事にした。それは金利上昇局面が迫る時期に相応しくないと考えたためだ。なので、iDeCoの安定運用にはREITを使っている。

それに対して、自己勘定では外貨(グレイ+黄色)も株式(青+グレイ)もそれぞれ70%前後でそこそこのリスクを取っている状態だ。株式の割合は±10%くらいの変動はあれど総じてブレていない。外貨&外国株投資は21世紀の初めに20%前後だったのと比較して、大きく伸長してきた。これは、医療関係や金融・鉱業の銘柄に注目したためであり、海外旅行する中で自然と外に目が向いた事もきっかけとしてあった。

<私の4分法>

(2)地域セグメント

今度は株式を地域・国別に見てみる。全体の90数%は日本、欧州(英独ス)、米州(米伯)、AP(アジア・パシフィック)でほぼ4分割されている。残り僅かな部分にアジアなどの新興国投資を当てている。

タイルチャートを作ってみたが見づらいのでここでは省略する。

(3)投資の視座

ここは最近の主流トレンドとは異なる。DCやiDeCoに関してはインデックス投資に限定されるので選択の余地がない。

それに対して自己勘定はほぼ全て個別株にしている。理由はただ1つ。主体性の有無だ。ETFはどんなに慎重に選ぶプロセスを踏んだとしてもたいしたパフォーマンスの差を生まないだろう。投資効率ばかり考えて投資するのは機関投資家の発想で、個人は好きな会社を買うのが自然だ。

それに、個別株の方が楽しい。値上がりすれば嬉しいし、値下がりしても悔しい。インデックス投資にはその醍醐味がないのでどうしても興味が向かない。僅かにSPYDなどのETFも買ってみたが、今後もETFを主軸に据える事はないだろう。

もう1つの切り口としてグロースとバリューがある。下図ではgrowth重視かdiv重視かで表現している。債券投資でないので株式は基本的にgrowth重視でいくべきだろう。そのつもりで買っている。ただ、想定違いは往々にして起きる。そのため、ついつい配当利回りを気にして銘柄選別しているのもホントだ。

尚、下表で「スピンアウト」としたのは会社分割で新会社の株式割当を受けたものを意味している。

インデックス投資はホンの僅か>

(4)業種セグメント

個別株投資だと、業種分類も大事になってくる。ただこれもあくまで結果であって、この割合を目指したものではない。

ここでの業種分類はオリジナルだが、海外投資を主としているため海外企業にしかなない医療や鉱業、コングロマリット系にも投資するため、そうした業種が多くなっている。GAFAなどIT系企業は興味ないので1銘柄のみで基本的にはインデックス投資に任せているのみだ。

「all」とはセクターを絞らないインデックス投資を意味する。「その他製造」は日経新聞の分類とは異なり、印刷業や楽器だけでなく化学・機械・電気など医療に含まれない製造業全般を意味する。

<投資先には好みが表れてくる>

(5)設計図か結果か

ここまで見てくるとポートフォリオ(資金配分)は結果だと思うのだ。なので、私にはリバランスって言葉がない。個々の銘柄を売買するタイミングで結果としてポートフォリオが動くものだと考えている。

勿論これは私の場合であって、投資に関わるひと個々人の考え方は様々だと思う。自分に合ったやり方がいいと思う。

【註】本日の記事に載せた資料はいずれも2022年末、iDeCoもほぼ同時期の投資配分を意味する。DCは数年前に解約している。

資源開発トラブルは商社株のリスク

先日のブログで商社株について触れて、三菱のスリーダイヤ・マークをアイキャッチ画像に使った。ちょうどタイミングよく他商社の話題が出てきたので、本日は三井マークを選んでみた。

<三井マーク>

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(1)北海道蘭越町で蒸気噴出報道

北海道で資源開発を目的として三井石油開発が掘削していたら、蒸気が噴出して硫化水素ヒ素が検出されてしまった。しかも硫化水素中毒の被害にあった住民が診断書を手渡そうとしたら押し留められたとか。同社はそんなことはしていないと主張するがホントなのか。真偽不明ながら、ひた隠しにしていた経緯が明らかになると世間は開発会社をやっぱりと、訝しい眼差しで見る事になる。

NHKサイトより>

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ネット検索すると、三井石油開発筆頭株主(100%出資)は三井物産だった。同社HPにも7/7付けで子会社の問題について簡単な文章が載っている。

<7/7付け親会社コメント>

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ラーメンからロケットまで何でも商う商社だから、もしかして温泉業も営んでいるのか。もしやと思って検索すると、別の三井系企業が温泉掘削していた。但し、商社系ではなくて、別の上場企業である三井金属鉱業の100%子会社である三井金属資源開発だった。

<同社HPの温泉開発>

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当社は、国内外の様々な地下資源開発や環境調査対策工事のために地球と向き合ってきました。その技術と経験を活かして、温泉調査・掘削・試験・設備設置・維持管理の全てをお手伝いします。また、温泉審議会への提出書類作成なども代行します。

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※地図と文章の引用元

https://www.mindeco.co.jp/hotspring_development/

上の地図を見ると岐阜県に業務が集中している。これは同地域での鉱山開発が盛んだったのか。岐阜の鉱山と言えばスーパー・カミオカンデ神岡鉱山が有名だ。もしかしてと思いネットで調べてみると、やっぱり神岡鉱山三井金属鉱業が操業していたヤマだった。

そうか、三井石油開発地熱発電の調査で想定外の温泉を掘り当てたのならば、同じ三井系の三井金属資源開発に事業譲渡すれば最終的にスッキリと収まりそうだ。ただ、ヒ素硫化水素など環境に悪影響を与えた事実は残る。有害物質の除去、継続的なモニタリング、被害者の救済はずっと負担としてのしかかってくる。風評、企業イメージ悪化も加わってくる。

この商社はかつてメキシコ湾沖の原油流失事故でもBPとともにコスト負担を強いられている。以下にリンクを貼った東洋経済オンライン(2011年当時)によると、子会社の三井石油開発が約870億円の賠償金を支払っていた。そうか、資源ビジネスは一旦権益を獲得すれば継続的に収益貢献するけど、ドボンする案件もあるって事なんだな。

https://toyokeizai.net/articles/-/7100

(2)集中投資と分散投資

と、ここまでの文章だと下世話な記事で終わってしまうが、このサイトはFP・投資の記事を書いている。そろそろ本筋に戻そう。

五大商社に投資しているバフェット氏は三井石油開発三井物産の100%子会社だって知っているのだろうか。もし投資会社である商社がリスクを隠しているにしても、いずれ公になっていくのでは。

個別企業に投資する事は常にこうしたリスクがつきまとう。バフェット氏もそうしたリスクを考えて、三菱商事を一択にするのではなく、五大商社にリスク分散したのかも知れない。

まだ三井物産の株価に影響は出ていないけど、1つリスクを抱えた事に変わりない。だから個別株投資は危ないとか、インデックス投資が一番、ETF投資がラクって主張をする向きもいるだろう。昨今の数字で見たパフォーマンスはそうかも知れない。

でも、全てを他人任せにして市場全体が長期の下落相場に入った時にどうするのか。市場平均だから下がっても構わないって言い訳は何も生み出さない。それにインデックス投資って思考停止状態だからなんにも楽しくなさそう。好きな企業、応援したい会社を選んで投資した方がポジティブな気持ちでいられるのだ。