H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

既存株主に新株を付与してくれる外国株はありがたい存在

日本株に投資していると、上場株式を取り上げられてしまう事がある。松下や日立系列の上場子会社であり、NTTドコモであり、大手商社系列でも一旦上場させた子会社をいつの間にかTOBを仕掛けて完全子会社に戻してしまうケースが何度かあった。そう、いずれも親会社の都合で子会社を吸収して個性を消してしまうケースだ。

勿論、子会社を設立する時にも親会社が100%出資しているので、国内の大企業の末端に連なる少数株主に何ら恩恵が及ぶ訳ではない。

ただ、外国株に投資していると、特定の分野で会社分割・上場させるケースがある。で、新会社の株式を既存株主に割り当ててくれるのだ。私が経験したもので言うと、かつて優先株社債パッケージを割り当ててくれる優良企業もあった。

少額投資の場合、日本ではそもそも既存株主に増資割当が来る事例がない(少なくとも平成になってこの方ないのでは)けど、外国株だとそうした事例で海外株主にも増資引受権は発生する。ただ、外国証券口座の規約に抵触するのか増資そのものには応じられないため、増資権利の売却代金が入金された事も3回ほどあった。いずれもリーマンショック後の2009年頃の事だ。

つい先日も英国の大手製薬企業グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithklein)でこんな報道がされていた。以下、テレ東BIZ(2021年6月23日)から引用する。

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イギリスの製薬大手グラクソ・スミスクラインは23日、大衆薬事業を2022年半ばに分離すると発表しました。グラクソ・スミスクラインは2019年に大衆薬事業をアメリカの製薬大手ファイザーの大衆薬事業と統合し、合弁会社を設立する取引が完了していました。今回はその会社を分離し、ロンドン市場に上場させるということです。処方箋のいらない大衆薬は広告費などの費用がかさみ利益を上げにくいとされています。今後は売却収入でワクチンの研究開発などを拡充させる狙いです。

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大衆薬事業を別会社に仕立てて、独立採算で経営していくとの事。Glaxo自身は売却で得た資金を投じて新薬開発に賭ける意向のようだ。

実は、製薬会社でこうした例が多い。近年でもスイス・ノバルテフィス(Novartis)が眼科領域の製薬企業アルコン(ALCON)を分割したとか、今年になっても米国メルクがバイオシミラー薬に特化したオルガノンを分離上場させている。また、米国アッヴィ(Abbvie)もアボット・ラボラトリ社から分割された会社だ。以下にWikipediaの説明文を転載する。

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2013年1月1日、米国の製薬会社、アボット・ラボラトリーズからの分社独立により設立された。このスピンオフは2011年10月に発表され、エスタブリッシュ医薬品がアボット・ラボラトリーズで引き続き提供される一方、研究開発型医薬品事業(新薬事業)部門は新会社により継承されることとなった。分社時点でアッヴィの資本・株式はアボット・ラボラトリーズから完全に独立し、以降両社の資本関係及びグループ会社としての関係は存在していない。

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全てを把握していないが、こうしたケースにおいていずれも既存株主に新会社の株式を割り当てているのだ。なので、元の大企業に多くの権益が残るのでなく、キチンと株主の権利が保証されて、資本主義が上手く回っていると思う。

ただ、3つほど注意すべき点がある。1,2点目は正確な情報だが、3点目はキチンと裏取りができていないので参考情報レベルに留まる。

先ず、新会社の株式はみなし配当とされる事。税務上は配当所得として扱われる。なので、もし株式を取得する場合には、新会社の株式の時価(おそらく上場初日の価格ではないか)に応じて国内で20%を源泉徴収当される事。ただ、株式配当なので預り金やMRFから出金される。勿論、確定申告で外国税額控除を使っても構わないし、新会社の業務に投資妙味がないと考えれば市場で売却する事を選択する事もできる。

2点目は、元の銘柄の買いコストは変わらない点だ。例えば、時価で100USDの株価だったとして、4:1で新会社の株式を割り当てられた場合、20USD分は新会社の価値として分離されるので権利落ち後の株価は理論的に80USDになる。でも新株は株式配当扱いなので元銘柄の取得コストは不変であり、心理的にどうしても含み損が発生したような感覚に陥る。

最後はグレーだが、新会社の取得コストはいくらと考えるべきなのか曖昧な点だ。買いコストはゼロとするのか、上場初値を以って買いコストと考えて構わないのか。前者であれば売却時に全額を譲渡所得とみなす事になるし、税負担は重たくなってしまう。証券会社に確認した事はないけど、こうした株式配当は特定口座から外れて一般口座扱いになるので、煩雑な手間が残ってしまう。

まあ、譲渡所得の扱いはさておき、資本主義のダイナミズムに組み込んでもらえる点で、新株割当はありがたい制度だ。

【参考】また別の機会にTOB保有銘柄が上場廃止になったケースも書いておきたい。こちらも経験があるけど、ちょっと面白い現象が生じる。

【2021.7.27訂正】過去の取引記録を振り返って、赤字部分を加筆訂正しました。