H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

ポートフォリオのリスク・リターン評価手法

ポートフォリオのリスク・リターン評価を考える上で、ヨコ軸にリスク、タテ軸にリターンをとってグラフで示す場合がある。この部分はCFP試験においても困った分野だが、できればテキストでキチンと把握する機会を持っておくのが望ましい。

(1)資本市場線

1つには下に凸な放物線を右に寝かせたような恰好で、そこにリスクフリー・リターン点(リスク=0で預金等の利率をリターンと考える)から放物線に対して接線を引く事で得られる資本市場線がある。因みに放物線の上方が有効フロンティアと呼ばれて、投資戦略として有用なエリア、接点がベストな投資配分と言える。

もう少し正確に言えば、この放物線は常に左に凸な曲線となる訳ではない。期待リスク、リターンの異なる2つのポートフォリオA,Bが2つあったとして、2ファンドの相関係数が1.0(正の相関)であれば直線となり、-1(負の相関)であればリスクゼロの軸上を通る折れ線となる。その途中は相関係数が引くまるに連れて、凸が左に突き出てくるのだ。

(2)リスク指標として何を考えるのか

市場全体であれば標準偏差σでいいだろう。正規分布においては日次の変動幅が概ね67%の確率で±σの範囲内に収まる。±2σの範囲に広げれば95%、±3σの範囲に広げると99%の確率で捕捉できる。勿論、マーケットには大暴落や急騰もあるので異常値が示現する可能性もありえる。

もう1つがβ値だ。市場平均の上下動と比べて、為替動向や市況によって株価が大きく変動する会社もあれば、食品や公益企業のように変動幅が緩慢な企業もある。市場平均と同様であればβ=1.0、振れ幅が大きければ>1.0、緩慢ならば<1.0となる。

また、リスクは2つに分解する事ができる。1つは非システマティック・リスクで銘柄数を増やす事でゼロにできるもの。証券会社の資料で「20銘柄くらいに分散すれば大丈夫」とか書かれているものだ。それに対して、システマティック・リスクはβ値に依存するのでマーケットが日々上下動を繰り返す存在である以上は不可避なものだ。これに関してもネット上でグラフと照らし合わせて確認して欲しい。

尚、ボラティリティー・インデックス(VX指数)もあるが、残念ながらこの指標を用いたリスク評価については把握できていない。

(3)評価指標

評価指標は2つあり、いずれも分母にリスク、分子にリターン(該当ポートフォリオのリターンー無リスクレート)を用いる。シャープレシオは分母に該当ポートフォリオのσを、トレイナー尺度は分母に該当ポートフォリオのβを使用する。いずれも、評価指標の値が大きいほど高パフォーマンスだと言える。市場全体を扱うようなインデックスファンドであればσを用いたシャープレシオが有用。逆に、銘柄数を絞ったオリジナルなファンドであればそれ用のβを用いたトレイナー尺度が適しているだろう。

(4)証券市場線を使ったジェンセンのα

リスク評価にβ値を使ってリスク・リターンのグラフを描くケースもある。この場合、無リスクレート(β=0)を切片として、β=1の場合のリターンを結ぶ証券市場線を引く事ができる。

その時、当該ポートフォリオのリターンが証券市場線(期待値)よりも上にあるのか下にあるのかで相対的な評価をする事ができる。この同一β直線上における上下のブレ幅をジェンセンのαと言う。プラスであれば標準より良好、マイナスなら標準以下になる。

Wikipediaで証券市場線を検索>

(5)評価指標の使い方

ロジックは分かる。同一カテゴリーでも類似する投資信託ETFがいくらでも存在する。そうした場合に評価機関が格付けするにはこうした指標を使う事はできる。でも、これらの指標を一般投資家が現実的に使うのだろうか、ここが問題だ。

現実には投資対象を決める所で終わりになると思う。取引証券会社が扱っている日経225とかSP500のファンドを一択するだろうし、投資においてここに細かく検討時間を割く事が大事だとは思えない。もしチェックするにしても星の数くらいで十分ではないか。

(6)資本コスト計算

はて、ここまで学ぶ中でどこか聞き覚えのあるロジックだと思った。そう、資本コスト計算で無リスクレートと同義の言葉を使っていたのだ。資産の多寡や保有資産の質を加味して資本効率を加味した利益額を考え直す概念だ。確かにテキストを読み進めるとこう書かれていた。

CAPM(資本資産評価モデル:Capital Asset Pricing Model)により求められた期待収益率は投資家が企業に対して求める収益率と見做すことができる。これを株主資本コストと言う」 ※一部補記あり

確かに投資家と企業、投信業者と市場平均それぞれに同じような関係にある。

こうしたファイナンスのロジックって、PV(Present Value)とFV(Future Value)でも思うのだけど、類似ロジックがそこかしこに登場する。配当割引モデル(見込み株価=配当÷期待収益率)も同様で、式は成立しているけど、期待収益率に込める想いは投資家それぞれに異なるのでなんとも共通の答えを導出できないのが辛い所だ。

(7)終わりに一言

今回の記事はflatに書いた。あまり熱量が無いのは自分の投資手法と異なり、こうしたファンド分析に興味がないためだ。自分としてはあくまで個別株派。その方針についてまだ語り尽くしていないが、1年前には例えばこんな記事を書いている。もし宜しければご参考まで。

hassan01.hatenablog.com

【註】この記事を書くにあたってファイナンスに関する某大学テキスト、並びにFP協会のCFP試験の過去問解説を参考とした。各種グラフをそのまま引用するのは憚られるのでネット上にも散見されるものを参照下さい。

他にインフォメーション・レシオがある。こちらは消化不良のため適切なコメントを付記できない。野村證券HPの文章を引用して終わりとする。

ポートフォリオのリターンとベンチマークのリターンとの差(アクティブリターン)の平均値をアクティブリターンの標準偏差(トラッキングエラー)で割って導出される。この数値が大きいほど、とられたリスクに対する超過リターンが高く、アクティブ運用の効率が高い」