H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

金融資産課税を強化する議論

自民党の総裁選で、高市候補が金融資産課税の強化に触れている。インフレ率2%を達成した暁には、配当課税とか譲渡益課税を現行20%から30%へ上げていく事を想定しているようだ。

背景にあるのは貧富の格差拡大を解消したいって事。2000年代に伸長した契約社員や派遣による働き方の増大、そして現在のコロナ禍における想定外の離職が追い打ちをかけているのも事実だろう。報道によれば、アメリカでも上位1%の人が29%の資産を握っているとか。確かに格差の拡大が政情不安を引き寄せてしまうようではいけない。

<9/15頃の日経新聞より>

f:id:hassan01:20210926223832j:image

ただ、法人課税と異なり、個人の所得税は所得を10種類くらいに分けており、あるもの(ex.給与所得や事業所得)は総合課税で累進課税を採用している。別のもの(ex.譲渡所得)は分離課税を採用している。証券投資であれば特定口座を開設して利益の20%を源泉徴収して終了する人が多いだろうが、制度としては複数証券口座の損益や過年度損失を繰越す事で損益通算をする事も可能となっている。また、配当所得は源泉分離課税で終了(申告不要)、総合課税、分離課税の3つから選択する道が用意されている。先ずはその体系からして複雑だ。

そうした課税体系が整備されてきたプロセスやその経緯を知らないので迂闊な事は言えないが、金融資産課税をする事の妥当性や公平性もキチンと議論して欲しい。それに証券投資で大きく儲けているのは政治家なのだろうし、自分達の懐が痛むような改正をそうやすやすと行う事はないようにも思う。穿った見方をするようだが、ロバート・ヤマザキ「金持ち父さん、貧乏父さん」で主張しているのは要するにそうした構図なんだと思った。

さて、話を元に戻そう。金融資産課税の見直しをする場合には以下をシッカリと考慮願いたい。

(1)譲渡所得

かつて、(正確な年を覚えていないが)25年くらい前に殆どの投資家はその売買益について非課税だった。年間に一定回数以上の売買を行った人だけが課税対象者になっていた認識だ。その後、利益の20%か売却代金の1%を選択制で納税する過渡期が訪れた。で、利益の10%を納税する時代が2013年まで続き、それ以降は20%(所得税15%、住民税5%)になっている。

濡れ手で粟の状態で儲かる不労所得ならば、高い税率もあっていい。ただ、証券投資は常に儲かるものではない。塩漬けして売るに売れない株もあれば、売却して大損する株もある。それも前年に大儲けして20%納税したのに、翌年になって大暴落に巻き込まれてしまい前年利益の2倍の損を被る事だってあるかも知れない。それは、証券会社の収益が昔から安定していない事でも容易にチェックできると思うのだ。

また、総合課税される所得に関しては累進税率になっているので、低所得者にも一律20%が課税されている訳ではない。課税所得金額330万以上の部分に対して20%だ。しかも、給与所得控除や基礎&扶養控除、社会保険料控除などいろいろな控除が認められているので、収入金額と比べて課税所得金額が大きくシュリンクしていく構造になっており、額面通りに税率が掛けられている訳ではない。

<参考:所得税の税率表>

f:id:hassan01:20210926223751p:image

(2)配当所得

手前で触れたように配当所得の課税方法は選択できる。銘柄ごとに選べるし、(試した事はないが)配当支払い時期ごとに選べる筈だ。選べる事は自由でありがたいが、考える余地が大きすぎて面倒でもある。ここに関してはどうすべきかまだ見えていない。

ただ、配当の税率をこれ以上upしてしまうと、過剰に徴収してしまう事例が更に増えてしまうのではないか。一般のサラリーマンで配当所得控除や外国税額控除を使って還付申告するケースは少ないと思われる。と言うことは今でも本来の税額以上のモノを納め過ぎている人がいる。所得税率で23%(課税所得金額695万超)や33%(課税所得金額900万超)を適用している人は人口比で見るとかなりの少数派だ。そのレベルまで源泉徴収税率を上げる事は果たして妥当なのか。

また、所得間のバランスを保つ点で、配当所得の税率が上がるのであればおそらく利子所得も揃えて30%に上げていくのだろう。かつてもそうした制度移行をしていたと思う。今でこそ超低金利時代で目ぼしい銀行利息は付かないが金融課税としては証券と銀行で足並みを揃えていく事になるのが自然だろう。

*

他方、立憲民主党も明るい話題を振りまいている。年収1000万円以下で所得税を非課税にするとか、消費税を期間限定で5%に引き下げるとか。国政選挙を直前に控えているので気持ちは分かる。それで国家財政が緩まないならヤレばいい。まあその前に政権政党に復帰できる(orさせてもいい)ような安心感・現実感がないといけない。それ以上考える必要は無さそうだし、こうした政策がふわっと出てくる時点で拙速だとか軽率過ぎるんじゃないかと疑ってしまい、政権が遠のく印象を受けてしまう。

<9/25頃の日経新聞より>

f:id:hassan01:20210926223913j:image

令和2年分の相続・贈与に関わる税制改正などポイント

本日は、CFP試験対策もあって整理しておく。必ずしもtimelyな話題とは言えないものの、個人的な事情で書いておくもの。

(1)マイホーム取得資金の贈与特例

基礎控除に加えて、控除が継続されている。金額は4タイプに分かれて定義されている。以下は、2020.4~2021.12にマイホーム取得契約をした場合のもの。

               消費税あり   非課税の個人間売買
―――――――――――――――――――――――――――――――――

省エネ、耐震、バリアフリー:  1500万円    1000万円
一般住宅         :  1000万円     500万円

条件は概略以下の通り。

・20才以上で所得2000万円以下
・贈与サイドは直系尊属3代まで
・新築(床面積40~240㎡)、中古(築20年以内で耐火なら25年)、敷地の先行取得、増改築(工事費100万円以上)
・贈与翌年の3/15までに居住、または近いうちに確実
・3/15までに贈与税の申告を提出

(2)配偶者居住権の創設

被相続人の持ち家に住んでいた配偶者が家を使い続けられる権利であり、所有権とは別物。終身に亘って無償で使用・収益利用できる。また、最低6ケ月間は自宅に無償で住み続けられる配偶者短期居住権もある。以下に注意。

・遺産分割時に権利発生
・建物所有者でない場合には登記必要
・譲渡不可

また、相続税の対象となり、仮に自宅が3600万円とすれば、妻の配偶者居住権1800万、子の負担付所有権1800万とする事で妻にも預貯金を相続で受け取る余地を設ける事ができるようになる。

【番外編】所得税について

2020年より、給与所得控除(-10万円)と基礎控除(+10万円)で入り繰りが発生している。一般の給与所得者にとって「行ってこい」で増減税ないなのでどんな意味があるのか判らなかった。

今春、いざ確定申告で電卓を叩いてみると、給与所得以外の収入にdependしている人にとっては課税所得金額を10万円減らす意味があるのだと知る事ができた。個人事業主やフリーターなど多様な働き方をする人が増えている社会情勢に合わせて、税領域で変化しているものだと理解した。

また、基礎控除の増額に揃えるように扶養控除も+10万円されているので、扶養家族が多い給与所得者にとってもメリットがある。これも独身納税者よりも子育て世代など家族持ちをfollowしていく税制変更なのだろう。

*

今年度はどんな改正がなされるのか、注目していきたい。

 

※2021.11.3訂正:(1)項に誤りがありましたので訂正しました。

※2021.11.17補足:配偶者居住権に関して、11/15付けで別途「配偶者居住権について整理する」記事をアップしました。

副島隆彦「目の前に迫り来る大暴落」

副島隆彦の本を読むには初めてだ。記憶に残ったkey-wordを挙げていくと以下の通り。

【政治】
新型コロナウイルスは米国の陰謀

【国内経済】
・日銀の国債買入がGDPと同額の570兆円に達した
預金封鎖とデノミ
ソフトバンクGの動向

【国際経済】
・W.バフェット氏のメッセージ
GAFAの行く末は公共財かも
・SPACの思惑

【金融マーケット】
・ドル暴落と金価格上昇を予想
・アルケゴス・ショックで野村証券がヤバイ
・割引現在価値で取引するのはリスキー

Youtube等を使って誰でも個人的な意見を制限なく言える時代だ。ドキドキ心配してしまう内容も多いけど、どこかで聞いたような話がない訳でもない。ただ、ここに書かれた全てを「ありえない」と言い切るのも危険だし、心に留めておかなくてはと思った。

このブログでそれら全てに対して触れるのは無理であり、いくつかに絞って書いていく。

(1)米国株の好調は永遠ではない

やはり「山高ければ谷深し」の格言は生きていると思う。GAFAとMSFTへ過剰に集中した投資が天井知らずって事はあり得ない。いずれ何らかの転機が来るだろう。1989年は日本の銀行株だったので米国の陰謀で潰したかも知れないけど、今回はあくまで自国のIT企業だ。ものづくり企業なのか考え方はあるだろうけど、もう世界中のスマホユーザに入り込み過ぎている。確かに電気や水道と同様に社会インフラと捉え直してしまうのはあるのかも知れない。でも、それで技術革新は止まってしまわないのか、そんな課題解決も含めた解が見えてこない。

また、バークシャー・ハサウェイ時価評価がTOP-10に入ってきた事は気になっていた。アップル株などを保有し始めた事で、バークシャー株そのものも疑似GAFAと見做されてしまったのか。だとすると、厄介だな。同社は投資会社であり事業会社でもあるので後者にもそれなりの蓄積が出てきたのかと思っていたけど違ったか……

(2)暴落する通貨はどちらか

円暴落説とドル暴落説がある。前者であれば、円の価値が下落するので外貨保有しておく事であらかじめそれなりのリスクは回避できると考えていた。

この本は後者の路線で書かれていた。ドル暴落はGAFA株の大暴落とセットになると米国株投資が悲惨な事になって、日本人はそう困らないような気もする。ただ、2024年のリデノミ説が現実になると、どっちつかずで円貨も外貨も傾いてしまう。著者は金投資と言っているように見えるけど、他にどんな策が考えるられるのだろうか?

(3)アルケゴスの何が問題なのか

正直ここは素人には理解できていない。同じテーブルに付いているのにいつも米国以外の投資銀行にツケが回されるのであれば、自衛手段を練らなくてはいけない。それは野村證券であってもメガバンクであっても努力して欲しい。報酬制度でなんとか対処できるものならすればいい。

ただ、割引現在価値の妥当性をキチンと見抜けるようにならないといけない。企業の現在価値を見抜く事だってできないのに、皮算用して数年後の将来価値を仮定(第三者の勝手な期待値)してそこから逆算した割引現在価値に一体どれだけの正確性が期待できるんだろうか。ちょうどCFP試験のためにDCF(割引キャッシュフロー)計算の過去問とか解いてみたけど、やっぱりテクニックに寄ってしまうきらいがある。

(4)日銀の国債買入が570兆円に達した

この数字を知らなかったのでショッキングだった。正確な開始時期を把握していないけど、もうこんな天文学的な数字に達してしまったのか。570兆円って数字は新型コロナ騒動の前に日本のGDPとして発表していた数字とほぼ同じものだ。

「いつかヤバイよね~」って事は、ある場面で居合わせた人と雑談した事がある。誰も知らない訳じゃないけど、でもコロナの「定額給付金」でも「持続化給付金」でもなぜか政治家はお金を増刷する方向に気前よく持って行ってくれるし感覚が麻痺してしまう。丸見えの爆弾を抱えたまま、政府や国会が笑っているようで怖い事だ。

ちょうど今日は76年目の終戦記念日。当時も戦時公債を発行したもののハイパーインフレで100分の1の価値に暴落した状態で償還したとか。人生80年とすれば、そろそろあの当時の悲劇を知っている人、苦渋を舐めた人が年を取って徐々に亡くなっていく。だんだんと悲惨な出来事のリアルが判らなくなってしまう頃なんだな。

最近のポートフォリオはこんな感じ

理想的な投資ポートフォリオはどんな形なのか。一般的に言われるのはこうしたものだろう。

・債券、株式、不動産の三分法
・国内株式、外国株式、国内債券、海外債券を25%ずつ
・リスク資産は100(or90)から自分の年齢を引いたパーセンテージ

どれもそれなりの説得力があるものだと思う。私個人の場合、ざっくり以下の4つに分けて把握している。

・国内株式(相場リスクあり)
・外国株式(相場リスク&為替リスクあり)
・外貨預金(為替リスクあり)
・円貨預金(日本円リスクのみ)

ちょうど東京2020オリンピックが開催されたタイミングなので、それを4年毎に時系列でみてみよう。

<Historical Portfolio(%表示)>

f:id:hassan01:20210811205509p:plain

100分率で見ていくとこの16年で株式と預金の割合は殆ど変化していない。特に理想の割合を決めている訳ではなく、あくまで自然体で個別株を売買した結果である。唯一大きくブレてきたのは外国株式の伸長と、それに伴う日本株の圧縮傾向だ。2つの円グラフを比較する事でより鮮明に把握できると思う。

<2004年と2021年のPortfolio構成差異>

f:id:hassan01:20210811205534p:plain

この事は以前に別の記事でも書いた事があるが、外貨重視で個別株を買い進めてきた結果だ。

【参考】外貨比率に関して

https://hassan01.hatenablog.com/entry/2020/09/26/192922

外国株の割合が高くなっているのでそこをzoom-upしてみよう。ここは最新版ではないが、1年くらい前に地域別セグメントを調べた時にザックリこんな割合になっていた。ただ、米国株の伸長が1つズ抜けているので正確には米州の割合がもう少し高めになっている筈だ。以前は欧州重視だったが、次第に米州とAPにも広げてきた。

・欧州株 30%
・米州株 30%
・AP(アジア&パシフィック)株 30%
新興国 10%

考えるべき事は3つある。

一つは自分の年齢を鑑みると株式比率が高すぎるのではないか。70%から逆算すると、私の想定年齢は20~30才となる。が、その年齢だと胸を張って言えるほどの実年齢ではない。ただ、株式の中では、その銘柄の成長性を追うものもあれば、債券代わりに保有しているような銘柄もある。敢えて高配当銘柄を買ったものもあれば、結果として高配当になった銘柄もある。なので、下値抵抗性のある銘柄を考慮すると、実態として70%のリスク・アセットと言うほどでもないだろう、と鷹揚に構えている。

二点目は為替相場の変動リスクをどう考えるかだ。全体の63%が為替の影響を受けるので、円安局面では評価益要因に、円高局面では評価減要因に直結してくる。なので、為替レートで一喜一憂してしまう。ただ、そこは軸をどこに置くかだろう。FT-World 500で世界の主要銘柄500を見ると日本株の構成比は銘柄数で見て10%程度に過ぎない。500の内ほぼ半数が英米の2ケ国だ。しかも、米国企業の利益規模は圧倒的に大きい。なので、多少の為替リスクを負っていても成長の可能性(及び高配当の可能性)に賭けた方が長期的な成長を得られると考えている。

最後に、預金の割合が大きく変動していない事はホントに適切なのか、と言う点だ。ここは改善すべきポイントなのだが、なかなか変われない点でもある。機械的な売買をしていないし、好きで買った銘柄が多いためどうしても売り場を逃す事が多い。もっとシビアに個々の銘柄の売却判断をすべきなのかも知れないが、それが苦手だ。なので、大量に持株を手放したのは2013年くらいだ。2013年は税制の区切りを迎えた年であり、そこまでは譲渡益課税が10%、翌2014年以降は20%になるので踏ん切りを付けるのに好都合だったのだ。

どうやって銘柄選定するのか

Index投資とか米国株投資が最近のはやりだ。正直なところ自分ではこうした路線に乗り切れていない。Indexより個別株投資を選好しており、米国株に特化するより欧州やAP(Asia&Pacific)も含めて銘柄選定していくタチだ。何が違うのだろうか。

(1)パフォーマンス比較が先行するのか

昨年秋にあるセミナーに参加した。一歩的に演者の話を聞いているだけだと眠くなってしまうけど、その場で前後左右の4人グループで話し合う時間が何度も設けられていた。そこで周囲のメンバーから「投資Aと投資Bを比べるとAの方が優れたパフォーマンスだ」って言葉が繰り返されていた。投資効率を比較するのは尤もであり、別におかしな事を言っている訳ではない。

個人的には違和感ありありだったが、それを上手く説明できる言葉を持ち合わせていなかった。改めて疑問に思うのは、企業内容よりも先にパフォーマンスの優劣なのかって事。過去の傾向をそのまま敷衍する事で、確かに近い将来を予測するのに役立つ。でも、それはあくまで過去に過ぎないんじゃないの。

また、最近は個別株よりも、ETF投資信託に関して詳述しているブログも散見される。個別株に関して定性的に書いているモノは読みたくなるけど、ETFの比較分析記事って何が面白いのか。ETFそのものが個別銘柄投資ではないので、もうそこでは数字の分析以外に話を広げようがないんじゃないか。全世界か全米か、SP500かNYダウか、それともセクターか、どれをとっても抽象的な話であって、行きつく先はパフォーマンス比較になってしまうのだ。

正直に言うと、三菱サラリーマン氏がSPYDなど3種類のETFを比較解説していた本は丁寧に書かれていて面白かったので、あれは秀逸だった。

(2)好きな銘柄に個別投資

私の銘柄選びにはパフォーマンスの優劣って言葉がないためだった。「○○銘柄が△△の点で優れているのでこっちの方が好きだ」って言う主観的な判断が先行している。定量的で無機的な基準で選んでいる意識がないのだ。少なくとも買候補として選んだ銘柄は何らかの視点において好きだと判断したものである。

好きで選んだ銘柄だからこそ、それなりの年数ずっと保有し続けられると思うのだ。例えば同一業種でライバル関係にある会社があった場合、両社に投資する事はない。Portfolio構成から見て片方に決めている訳ではなくて、あくまで好き嫌いで選んでいるためだ。例えばキリンビールアサヒビール三菱商事三井物産でも構わないが、主観的に選んだ1社を保有している。尚、この4社はあくまで例示でありいずれも保有していない。他に例外もあるけど、それは後段で触れる事にしよう。

別の方から「毎四半期で決算数字を追っているのか?」と聞かれた。そんなに真剣にfollowしていないので「追っていない」と答えた。決算数値(売上や利益、配当が上昇基調にあるか)くらいは日経新聞の証券面(日本株)と国際面(外国株)で眺めているけど、それ以上の事はしていない。それは、スポーツ欄で夕べ巨人が勝ったのか、阪神が何位なのかと確かめる程度のものだからだ。別に年間決算が崩れていたとしても、まあ来年儲けてくれればそれで構わない、と鷹揚に構えている。

それで済ませられるのは、①好き嫌いをベースにした上で買っている事、②単年のPL損益尻よりもBSでザックリ企業体質を見ているからだと思う。

(3)地域分散投資

次に、米国株投資じゃないのは何故か。これは米国に殆ど縁が無いためだ。米国を旅していないし、製薬企業で米国企業にあまり縁が無かったのが理由だ。

海外旅行すると、その国に対する好悪の感情が生まれる。大抵の場合、その国が好きになる。そこで銘柄を見つける事もあれば、world-wideに事業展開している企業を知る事もある。そんな会社を帰国後に調べて投資するケースもあった。

病院でいろいろな薬を処方されるけど、最近では外資系の医薬品メーカーが日本の製薬企業と販売委託契約を結ぶよりも日本法人を設立して直接販売するルートを構築しているのが多い。なので、処方薬から外資系医薬品メーカーを身近に感じる事が多い。そこでお目に掛かるのは大抵、英国かスイス、ドイツの製薬メーカーだ。新型コロナワクチンはファイザーとモデルナが先行したけど、米国の製薬会社にはあまり縁が無かった。確実に市場が伸びるだろうな、ってメーカーであればそこに投資してみる。結果として、医薬品メーカーに関しては何社か同時に投資していたケースがある。これが、前項で書いた投資方針と食い違う部分だけど、好き嫌いで選んだ結果なのでPortfolioが多少偏向していたとしても構わないと考えている。

また、world-wideに商売している企業は何もコカコーラとマクドナルドだけとも限らない。消費財メーカーでもグローバルに市場開拓している企業はほかにもあるし、そうした企業を見つけてくるのも海外旅行の隠れた楽しみにしている。

かつて藤巻健史氏(かつて三井信託銀行に勤めていて国会議員になった人)の本を読んでいると、盛んに米国株投資を奨めていた。米国企業の利益率の高さ、利益の絶対額の大きさを知ると心が揺れたのはホントだ。でも、実際に気に入った米国株を見つけるのが遅れたので実際に投資したのはかなり後になってからだったな。

吸収合併やTOBで上場廃止になる銘柄を考える

前回は、スピンオフで親会社株主に新会社の株式(新株)が割り当てられるケースを見てきた。今回はその逆パターン、上場廃止の場合を見てみよう。ケースとしてはいくつかある。

A:倒産、会社更生法申請
B:吸収合併により被合併会社(清算会社)となる

C:TOB提案に応募する(100%の株を買い集めるため強制売却)
D:TOB提案に応募する(一定数の株を買い集めるため任意応募)

E:上場基準に抵触して上場廃止 ex.西武鉄道
F:経営陣にMBO  ex.ワールド

このうち最後の2つのケースは個人的に経験していないので詳細不明。その他の4事例を見ていこう。

会社更生法を申請した場合、その2ケ月程先に上場廃止となるためストップ安を繰り返しながら株価は限りなくゼロに近づいていく。ただ、面白いのが0円とか1円になるわけでもない。日本航空でも5~7円くらいで前後していたと思う。もしあの時自民党政権だったら倒産の憂き目に会わなかったかも知れないが、たらればを論じても意味がないのでやめよう。もし譲渡損失を計上するのであれば、とにかく市場で売却する必要がある。取引最終日まで放置していると売却していない状態なので、譲渡損失が計上されない。

その後、いくらその株券を持っていても、おそらく売却のチャンスは訪れないだろう。実際にトライアルで某マンション開発会社の株券を記念に保有した事がある。1990年代に株券を引き取ったけど、その後一度だけ会社から手紙を受取った記憶はあるけど、1000株21,000円はホントに紙屑となった。

Bのケースは、存続会社の株式を一艇割合で受け取る事ができるので、売却にはならない。よって譲渡損益は発生しない。

CとDのケースは優良な上場企業が上場子会社を吸収する場合によく使う手口だ。松下電工や松下通信工業がPanasonicに吸収されたとか、大和ハウス工業でもそうしたケースがあった。米国の医療商社が日本の上場法人を吸収したケースもあった。大手商社でも、子会社株式を高い価格で上場させた後で数年後に安い価格で上場廃止した例がある。その商社はそうした操作を何回か行っているが、常に安く買い叩いている訳でもないのでどこまで作為的なのか判然としていない。これらは保有株を手放すのだが、たしか売却(=譲渡損益発生)扱いになっていなかったと思う。日本株ではこうした経験が5回ほどあるが、いずれも10年以上前なので正確な記録が手元にない。

その代わり、数年以内にあったドイツ企業による米国企業の買収では、保有していたその米国企業の株式を手放す事になった。ドイツ社が自社株に交換するのではなく、米国企業の既存株主に現金を支払う事になっていた。元々その企業の種子事業に関心があったのだが、継続保有が叶わずそこで縁が切れた。その時に、含み益があったけど、現金化しても譲渡所得にはならないで済んだ。

Cは全株主に対して強制的に売却(or株式交換)を求めるものだが、Dは必ずしも応募しても買い付けないケースもある訳でriskyだ。これは日本の医療関連の薬品メーカー(親)と医療サービス業(子)の間で持株会社を編成する際に出てきた話だった。いずれも上場会社でHolding-Company設立後は旧親会社も旧子会社も持株会社にぶら下がる形となった。なので、資本金を適度な規模に抑えたかったのと、親会社の発言権をシッカリと確保したかったのだろう。当時、医療サービス業の株主でその会社が好きだったのだが、親会社の意向に振り回されるのはイヤだと考えてTOBに応じた記憶がある。

まあ、何らかの思いがあって株主になったのだから想定外の事態で売却を迫られるのは嬉しい事ではない。ただ、その会社がTOBなり被合併なり求められる立場になると言うのは、少なくともそれだけの潜在的valueがあったのだとpositiveに受け止めたい。そして、それは自分の銘柄選定眼が正しかったのだと思いたい。

既存株主に新株を付与してくれる外国株はありがたい存在

日本株に投資していると、上場株式を取り上げられてしまう事がある。松下や日立系列の上場子会社であり、NTTドコモであり、大手商社系列でも一旦上場させた子会社をいつの間にかTOBを仕掛けて完全子会社に戻してしまうケースが何度かあった。そう、いずれも親会社の都合で子会社を吸収して個性を消してしまうケースだ。

勿論、子会社を設立する時にも親会社が100%出資しているので、国内の大企業の末端に連なる少数株主に何ら恩恵が及ぶ訳ではない。

ただ、外国株に投資していると、特定の分野で会社分割・上場させるケースがある。で、新会社の株式を既存株主に割り当ててくれるのだ。私が経験したもので言うと、かつて優先株社債パッケージを割り当ててくれる優良企業もあった。

少額投資の場合、日本ではそもそも既存株主に増資割当が来る事例がない(少なくとも平成になってこの方ないのでは)けど、外国株だとそうした事例で海外株主にも増資引受権は発生する。ただ、外国証券口座の規約に抵触するのか増資そのものには応じられないため、増資権利の売却代金が入金された事も3回ほどあった。いずれもリーマンショック後の2009年頃の事だ。

つい先日も英国の大手製薬企業グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithklein)でこんな報道がされていた。以下、テレ東BIZ(2021年6月23日)から引用する。

======

イギリスの製薬大手グラクソ・スミスクラインは23日、大衆薬事業を2022年半ばに分離すると発表しました。グラクソ・スミスクラインは2019年に大衆薬事業をアメリカの製薬大手ファイザーの大衆薬事業と統合し、合弁会社を設立する取引が完了していました。今回はその会社を分離し、ロンドン市場に上場させるということです。処方箋のいらない大衆薬は広告費などの費用がかさみ利益を上げにくいとされています。今後は売却収入でワクチンの研究開発などを拡充させる狙いです。

======

f:id:hassan01:20210702231051p:plain

大衆薬事業を別会社に仕立てて、独立採算で経営していくとの事。Glaxo自身は売却で得た資金を投じて新薬開発に賭ける意向のようだ。

実は、製薬会社でこうした例が多い。近年でもスイス・ノバルテフィス(Novartis)が眼科領域の製薬企業アルコン(ALCON)を分割したとか、今年になっても米国メルクがバイオシミラー薬に特化したオルガノンを分離上場させている。また、米国アッヴィ(Abbvie)もアボット・ラボラトリ社から分割された会社だ。以下にWikipediaの説明文を転載する。

======

2013年1月1日、米国の製薬会社、アボット・ラボラトリーズからの分社独立により設立された。このスピンオフは2011年10月に発表され、エスタブリッシュ医薬品がアボット・ラボラトリーズで引き続き提供される一方、研究開発型医薬品事業(新薬事業)部門は新会社により継承されることとなった。分社時点でアッヴィの資本・株式はアボット・ラボラトリーズから完全に独立し、以降両社の資本関係及びグループ会社としての関係は存在していない。

======

全てを把握していないが、こうしたケースにおいていずれも既存株主に新会社の株式を割り当てているのだ。なので、元の大企業に多くの権益が残るのでなく、キチンと株主の権利が保証されて、資本主義が上手く回っていると思う。

ただ、3つほど注意すべき点がある。1,2点目は正確な情報だが、3点目はキチンと裏取りができていないので参考情報レベルに留まる。

先ず、新会社の株式はみなし配当とされる事。税務上は配当所得として扱われる。なので、もし株式を取得する場合には、新会社の株式の時価(おそらく上場初日の価格ではないか)に応じて国内で20%を源泉徴収当される事。ただ、株式配当なので預り金やMRFから出金される。勿論、確定申告で外国税額控除を使っても構わないし、新会社の業務に投資妙味がないと考えれば市場で売却する事を選択する事もできる。

2点目は、元の銘柄の買いコストは変わらない点だ。例えば、時価で100USDの株価だったとして、4:1で新会社の株式を割り当てられた場合、20USD分は新会社の価値として分離されるので権利落ち後の株価は理論的に80USDになる。でも新株は株式配当扱いなので元銘柄の取得コストは不変であり、心理的にどうしても含み損が発生したような感覚に陥る。

最後はグレーだが、新会社の取得コストはいくらと考えるべきなのか曖昧な点だ。買いコストはゼロとするのか、上場初値を以って買いコストと考えて構わないのか。前者であれば売却時に全額を譲渡所得とみなす事になるし、税負担は重たくなってしまう。証券会社に確認した事はないけど、こうした株式配当は特定口座から外れて一般口座扱いになるので、煩雑な手間が残ってしまう。

まあ、譲渡所得の扱いはさておき、資本主義のダイナミズムに組み込んでもらえる点で、新株割当はありがたい制度だ。

【参考】また別の機会にTOB保有銘柄が上場廃止になったケースも書いておきたい。こちらも経験があるけど、ちょっと面白い現象が生じる。

【2021.7.27訂正】過去の取引記録を振り返って、赤字部分を加筆訂正しました。