H’s ある株ホルダーのFP日記

株ホルダーとして考えた事、FPとして伝えたい事を不定期に書いていくつもりです。

給与収入を分解して眺めてみよう

お金が貯まるか貯まらないか、漠然と悩んでいても始まらない。会社で経理を学んで何年か経過した後、ある出来事があってこのままの暮らしを続けていて大丈夫なんだろうかと不安になった経験がある。

その時の詳細は割愛するとして、当時EXCELでこんな表を作ってみた。実際の表はもう少しゴチャゴチャしていたが、本質的にはこれらの項目があれば足りると思う。

<我流のキャッシュフロー

【註】金額は200x年当時の個人的なものをベースにしている。但し、分かりやすいように銀行振込をピッタリ500万円にして、その前後の数字も殆ど10万円単位に調整している。

名称は”我流キャッシュフロー”としてみた。4列あるが、普段意識しているのは緑色セルだけだろう。毎月の給与が振り込まれる25日くらいだろう。しかもそれは月額(2列目に1年分で表記)だ。給与所得者として自分の年収(1列目)を意識するのは、おそらく年末調整で源泉徴収票を見つけた時くらいだろう。

ここでは1,2列目ではなく、収入を3列目のように分解してみる。

会社が銀行振り込みしてくれた金額は概ね給与だ。稀に、定期券、健康保険給付金、立て替えていた交際費や交通費が混ざっているので注意しておこう。また、あまり意識する事がないのがグレイアウトした部分の金額だ。とにかく税金や社会保険として強制的に天引きされた金額はそれなりの比重を占めている。ここでは参考数値として年収660万円に対してザックリ160万円、24%に相当している。

次に、4列目で収入の行き先、使い道を細かく見てみよう。先ずは160万円にものぼる税金と社会保険料だ。この数字を見るだけで(相対的に)所得税が高いとは言えない。多くを天引きされているのは健康保険料と厚生年金保険料(+雇用保険料も僅かに)だ。尚、社会保険料は労使折半なので、これと同額を会社が負担している事も忘れてはいけない。

生活費は細かく家計簿を付けなくても総額で構わないだろう。毎月、現金の残高がどれくらい増減しているのか確認しておけば確かめる事もできる。例えば、

前月末:10万円
給与手取り:30万円
今月の貯蓄:3万円
今月末:11万円
今月の生活費:(10+30)―(3+11)=27万円

といった具合だ。

ここで、オレンジ色のセルを見てみよう。手取り金額(Netの世界)で眺めていると1年で40万円しか貯蓄できなかったように見える。でも総額(Grossの世界)で見ればDC(確定拠出年金)積立金は個人をスルーして拠出金に変わっている。ここはEETって表現がある通り、拠出時も運用時も非課税で60才(今後は65才)まで運用できる。また、持株会(人によっては財形貯蓄もあるだろう)で強制貯蓄しているものもある。なので、それなりに貯蓄できているとポジティブに考える事もできる。

もっと楽観的に、厚生年金保険料も貯蓄しているんだとみなしてしまえば気がラクだ。勿論、DCも厚生年金も遠い未来まで使うことは叶わないけど。ここまで行くと年金2000万円問題もだんだん影が薄くなってくる。

私の場合はたまたま俯瞰で見なくてはいられない事情があって、こうしたEXCEL表を作ってみた。もしかして会社を辞めなくてはいけないかも、と不安に駆られたのがこの年だった。でも簡単な試算をしてみることで、まあなんとかなるでしょう、と不安な気持ちは幾分でも解消した。

なんとなく分かっているつもりでもボンヤリした内容はこうして可視化してみる事をオススメする。

ちなみにいざこの表を作ってみるとタテ計が合わない。税金も社会保険料も年額で把握しないといけない。ただ、月によって増減があるので概算で把握する方が手っ取り早い。ここでは正確な表を作るのが目的ではなく、あくまで傾向を把握できれば十分なので、アンバランスであればどこかに調整行を1つ加えてバランスさせてしまえばそれで構わない。

*

それと、岸田政権が軍事費や少子化対策を拡充しようとする2023年においては、それら予算増額の財資をどこに求めるかも気になる所だ。個人の年間キャッシュフローを眺めてみると、増税も困るけどあまり抵抗感がなさそうな社会保険料の料率アップもサラリーマンには十分に影響するものだと分かる。

その後、都合により一時期サラリーマンを辞める事になった。辞めた当初はかなり不安だったが、1年経過してこれと同等の表を作ってみると驚いた事もある。辞めた直後は前年度の住民税負荷と健康保険料の任意継続でそれなりの出費が嵩んで焦った。それが2年目以降になると収入は大きく減少したけど、同時に税金や社会保険料もストンと落ちた。確定申告などの制度で求められる知識も変わってくるし、1つのパラダイム・シフトだったのだと気付いた。それそれの立場で全く別の景色が見えるのだと分かったのだ。

*

本日は総じて明るく書いてみた。どのように家計のキャッシュフローを把握しておくといいのか、改めて細かい部分を書いてみたい。

 

※2023.7初旬:追記――――――

たまにTVから五公五民ってワードが聞こえてくる。はて、一般サラリーマンにとってホントにそんな厳しい現実に陥っているのか。念のため、上図に掲げた200x年の個人的なグロス給与と手取り給与、そんな数字で確かめておこう。

分母になるのは非課税分の収入を除いた660万円。公的に徴収された分子に数えるものは所得税30+住民税40+社会保険90で計160万。他に消費税を加算する必要がある。この年の支出が465万円となっているが、家賃は非課税でその他にも消費税と関係ないものが混じっているので、ここではザックリ課税対象を400万と仮置きして当時の消費税率8%で逆算すると、消費税額は約29.6万円になる。ここでは簡略化のため30万円で話を進めたい。

よって、公に納める分子は160万+30万=190万円。それを660万で割るとお国に収入の28.7%を納めていた事になる。200x年当時、私のような庶民は三公七民でまだマシだったと判断してよさそうだ。もちろん現在では消費税も10%にアップしており、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)もジリジリと上昇してきているので油断はできないのだ。

※2023.7中旬:追記――――――

改めてネット記事を読むと、五公五民の議論にはミスリードもありそう。一旦この記事はこのままにしておき、改めて別の記事を作成するつもり。

 

「N分N乗」で課税する事は少子化対策に有効か

政治家の頭の中ってどうなっているのだろうか? 唐突に所得税の計算で「N分N乗」が降って湧いた事に驚いたのが正直な所だ。

何も「N分のN乗」は新しい話でもない。現在の所得税の計算プロセスにも登場している。ただ、それが王道ではなくて、所得種別が10種類くらいに分かれている中でも山林所得(分離課税)に限定されているもので「5分5乗」と呼ばれている。

山林所得を計上できる人はかなり限定されている。まずは先祖代々ヤマを所有している人で、かつその年に売却益を得られた人に限られているためだ。もちろん私はそのどちらにも該当した事もない。

FPの勉強をしていると所得税計算ロジックを復習するので知識として知っているものの、敢えてそうした計算をする理由も把握できていない。おそらく長い人生において滅多にない利益なので、高い税率を負荷しないように配慮したものではないか。

以下では気になる問題点に触れてみよう。

(1)高額所得者優遇の惧れ

今回の話はその「N分のN乗」を給与所得など総合課税のプロセスにも適用しようとするものだ。確かに、子供の数が多い世帯で低い税率を適用するので税負担の軽減に繋がる。でも、既にTV等でも報道されているように、一般の給与所得者の恩恵以上に、扶養家族の多い高額所得者で減税効果が大きい。それは所得税の累進税率表を見れば明らかだろう。

所得税率>

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大抵のサラリーマンは税率10%か20%の範囲に収まっているはずだ。なので、子供が何人いようと減税効果は50%だろう。でも、高額所得者であれば、それ以上の圧縮効果がある。

(2)課税単位の変更と手続きの煩雑さ

しかも、新聞記事を読んでみると、夫婦共働きでそれぞれが納税者であっても、今後は1世帯として所得税を計算するように読めた。これはどこまで波及効果があるのか読みにくい。もし共働き夫婦であれば妻の所得税は年末調整でゼロにするのか? 夫の年末調整で妻の所得を合算するにはタイミングが合わないので、これまで確定申告不要になっていた世帯でも申告必須になるケースが多々出てくるのではないか? こうしたプロセス変更に伴う納税者と税務署双方の負荷増大を考慮したのだろうか?

(3)社会保険料も含めた全体感

実は世のサラリーマンの税負担はそんなに大きくない。正確に言うと、税負担よりも社会保険料(健康保険と厚生年金)の控除額の方が大きくなっている。なので、所得税を見直す事で妙な達成感が生まれる事はあっても、負担の本丸である社会保険料にスポットが当たらないのではないかと懸念する。

社会保険料は上限が決められているので、高額所得者ほど負担感は大きくない。税と社会保険料を一体として不公平感の解消を図るのが、一般的なサラリーマン社会に対して望まれる施策ではないか。

【1つの提案】

前項に関しては素人の限界を超えているが、給与所得者の所得税に関して提案するとしたら、やはり扶養控除額の見直しが妥当だろう。

現在、基礎控除は48万円、配偶者控除や扶養控除(16才以上)は通常38万円となっている。1人家族が増える事で生活費はどのくらい増えるのだろうか? 勿論、ここで実費相当額を控除すればいいと言っている訳ではない。でも、控除金額こそ扶養者の数に応じてストレートに反映できる数字であり、この変数を動かすのが現実的ではないか。

他に敢えて16才以上の子に限定しないで、昔のように赤ちゃんが生まれた瞬間から扶養控除の対象に加える案もあり得るが、これは扶養控除の年齢制限を変更した経緯(おそらく民主党政権時に子供手当が出てきた当たりではないか)を把握していないため軽々には論じられない。

<扶養控除>

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その結果として国全体の所得税額に増減ないように税率を若干プラス方向に調整する事で、単身者やひとり子供の世帯で増税となる方向で負担を分かち合う事ができるのではないか。一部の野党も揃って「N分のN乗」言い出した事は、およそ税の仕組みが分かっている専門家とは言い難いと思うのだ。

※画像はいずれも国税庁HPより転載

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

iDeCoのZoomセミナー(第4回)に出席してみた

またまたiDeCoセミナーの受講報告。ちょうど他の予定もあったので、この日はKinko’sの慣れない共有PCを使って受講した。いつもと違う環境で手間取ったのと、PCの右下に表示されている時刻が20分も遅れていたため、思いっきり遅れてZoomに参加した。

 


受給時に関する話題が多かった。ポイントを絞って振返ってみよう。

(1)受給前後の制度把握

国民年金の1号、3号加入者は60才で拠出終了となる。もしそれ以降も国民年金保険を支払う場合には継続してiDeCoに拠出する事もできる。2号加入者は60才以降も働き続ける限りは拠出が継続される。

(2)受給前後の運用変更

相場の急変に備えるために、受給開始前から徐々に安定運用に切り替える事を勧めていた。また、年金で少しずつ受け取る場合にはまだ時間があるので積極運用を一定金額であれば残しておく方が受給金額を少しでも増やせるので有効とか。まあ尤もなコメント。

尚、加入資格喪失(最長65才)した後は、受給開始した後であってもスイッチングは可能との説明があった。これは年金方式で受取する場合に覚えておくと良い。

(3)どう受け取るべきか

同じ運用金額であっても、一時金(退職所得)か年金(雑所得)か、60才ですぐなのか65才まで待つのかによって手取り金額は大きく左右される。

受取方法は二択ではなく、一時金と年金の併用を選択する事も可能。なので、全ての金額は必要なくてもある程度まとまった金額で住宅ローンの完済を予定している等の状況であれば、併用を選ぶ事もできる。

この辺りは個々人によって条件が異なるので、一般的な説明を繰り返すのに留まり、ケース・スタディするには無理があるのかも知れない。なので、自分の状況を再確認して、無理のない受け取り方を考えて何パターンか試算してみるといいだろう。

*

このセミナーは某銀行が主催したもの。これとは別の機会に、一時金(退職所得)か年金(雑所得)どちらで受け取るケースが多いのか知る機会があった。所得税を考えると殆どの場合で一時金を選択するとか。まあ、銀行の立場では一概にコレコレが有利と発言するのはリスクあるので、判断を各利用者に任せるしかないのだろう。

既にiDeCo(DC制度も含めて)に加入されている方であれば、自分で税金を含めた手取り金額のシミュレーションをやってみるのは、確定申告の準備としても受給直前の年齢になったら必要な事だと考える。

また、これからiDeCo厚生労働省の管轄)を始めようと検討される方であれば、NISA(金融庁の管轄)との比較検討もしておくと良いだろう。これまではどっちもそこそこだったこの2つの優遇制度だが、岸田政権の「新しい資本主義」を標榜する政策によって2024年以降のNISAが一歩リードする形になったと考え得るためだ。

2022年の年間損益状況

コロナ禍が始まって3年。2022年分の年間の収益状況を振り返ってみよう。

【損益level】

総じて良好だった。2021年末のような月次グラフは敢えて作成していないが、1年前と比べて利益水準は上がっている。細かな問題点については次項で触れる。

【損益科目ごとセグメント情報】

セグメント情報は2021年と同じ括りで作成してみた。

あらかじめ1点お断りしておく。昨年ブログに掲載した2021年の数値(相対化しているので単位は非開示)が速報ベースであって最終値と齟齬があったため、2021年のグラフが1年前に公開したものと若干異なっている。

評価損益は2021年より若干利幅が少ないが良好。但し、この中を株価上昇と為替評価損益の2つに分解してみると後者に依存する割合がそこそこありそうだ。なので、もし円高に振れていたら大きくdownしていたと思われる。

実現損益は年央に某外国株で160万円程度の損を吐き出した。コロナ禍で大きくダメージを受けていた業界で、株主割当増資も行われていて、コロナ禍3年目にして損切りを決断したもの。その後年末にかけてほぼ同額の実現益を出してネットでゼロに近づけた。ホントはシッカリ益出しすべきなんだけど、売りは苦手でついつい放置してしまうのが良くない。

配当金の上積みは良好。尚、このグラフに表示しているのは手取り配当金に税還付金を合算した数値。

【評価損益の隠れ要素】

2022年は、上記グラフに表現できていない要素が例外的に2つあった。

1つには未計上のマイナス要因が潜んでいる事だ。ロシア株ファンドの含み損だ。ロシアのウクライナ侵攻で全く身動きが取れないようになっている。値付が2月段階でstopしているため、個人的には含み益のままで済んでいるが実態としては引当金を計上すべきところだろう。

もう1つが株式配当の扱いだ。外国株の株式配当は現金化して受け取るか、株として受け取るか選択できるケースがある。勿論、国によっては必ず強制売却されるケースもあるので注意。で、2022年にはちょっとまとまった金額を株式で受け取った。その場合の収益は配当金ではなく、買いコスト=ゼロで購入した事にしている。なので、その新株を同年に売却していれば実現損益に計上されるし、保有していれば評価損益になる。2022年の場合には株式配当が丸々評価損益に組み入れられている。

念のため補足すると、株式配当も配当所得として源泉徴収されているので確定申告では配当所得として取り扱う必要があり、自分の内部管理と税務上の管理にギャップが生じている。

【株式買付】

2022年はNISAで新規銘柄を2つ買い付けた。これまでは重厚長大の大型株が多かったが、やや路線を変えて国際優良系の値嵩株を買った。120万円のNISA枠で余った金額でいつもお世話になっているIT企業に打診買いを入れてみた。

外国株で新規買付けしたのは、米国の金融株と新興国のIT系に少額投資した。いずれも株価はボロボロになった。不幸中の幸いと言うべきか大きく円安に動いたので含み損はそれほど目立っていないがタイミングは間違っていた。

他には、円安水準に気を使いながら既に保有している外国株の安値を拾って買い足したくらいだ。

1億円 見知らぬ壁は どこに立つ

あけましておめでとうございます。

今年も弊ブログを宜しくお願い申し上げます。

新年なので景気よく「1億円」や「30億円」などぶっ飛んだお話しから始めさせていただきたく。

*

11月の日経新聞に面白い記事が載っていた。まずはそのグラフを見てみよう。

<11/8日経3面より>

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1億円の壁は高い。資産の1億円、年収の1億円どちらも一生お目に掛かる事はできない高い壁だ。でも、俗にいう「1億円の壁」とは更に厳しい、所得1億円を意味する。そこまでは所得の上昇とともに税金(+社会保険料)の負担は高まっていき、負担率28.7%に達する。

ところが、それを境にしてもっと所得が上昇しても、負担率は21.5%(所得5~10億円)、17.2%(所得17.2%)と逆に低下していくのだ。それが「1億円の壁」で、かつてバフェット氏もこの問題を指摘していた。確か超高所得者の社会負担をアップして構わないって主張だったと思う。

でも、累進課税制を採用している日本において、あるレベルを超えると逆累進課税になってしまうのは何故だろうか。

理由は3つある。1つは所得によって税率が異なる事。給与所得や退職所得は総合課税されるが、譲渡所得など一部の所得に関しては分離課税が適用されている。こちらには累進課税が適用されるわけではなく、概ね固定税率だ。有価証券の譲渡所得課税であれば20%(所得税15%、住民税5%)となっている。

土地・建物の譲渡所得課税も同20%(所得税15%、住民税5%)である。但し、保有期間が5年以内であれば短期売買とみなされて高い税率39%(所得税20%、住民税9%)を適用される。それと、土地・建物の譲渡取引に関してはいろいろな優遇税制も用意されているので、そうした控除で課税所得を減額した後での税率適用になる側面も隠されている。

<11/8日経3面より②>

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2点目として、配当所得の扱いだ。確定申告に含める事もできるが、ここはかなり融通が利く仕組みとなっている。20%(所得税15%、住民税5%)の源泉分離課税のまま済ませておけば、それで確定申告を免除される。なので、もし所得を集計して大金になっていたとしても、税率は20%のままで問題ないのだ。

最後が社会保険料について。標準報酬月額に応じて保険料が決められている。ところが上限が定められているので、所得(≒標準報酬月額)があるレベルを超えても一定額に落ち着く。なので、年収1000万円の前半くらいより上のサラリーマンは総じて負担感が軽減されている。

一見不公平に感じる面もあるが、年金制度が世代間の扶助を謳っており、高額所得者に高額の保険料支払いを求めて、将来的に現実感のない高額の年金受給を示すのも非現実的なので筋は通っている。健康保険に関しても、別に高額療養費の補助制度があり、無制限に医療費が掛かるのではなく、セーフガードが設けられているので整合性は取れていると考えられる。尚、上限は健康保険と厚生年金で異なっている。

<参考:日本年金機構のHPより>

この「1億円の壁」の議論は以前から気になるものだったが、2022年12月になりようやく政治の議題に上がって来た。所得30億円以上の人に追加の税負担をお願いすると言うもの。

一度そうした制度を作れば、徐々に網を広げて適用対象者を増やしていく事になるだろう。税金や社会保険の仕組みを押さえておく事は必要だけど、1億円の壁がどこに立っているのか遠すぎて視界に入らない一般庶民にとっては縁のない事だな。

でも、11/8紙面に冒頭のグラフが載っていたのはどうしてなのか。やっぱり政治家のみなさんはその頃から高額所得者を狙い撃ちしようと考えていたのだろうか。それで観測気球を上げて様子をみていたのかも知れないな。

※この記事は2022年11月8日の日経新聞を参照しました。2つの図も同記事より引用。

2022年の年末にNISAで2題

最近NISA見直しを巡る話題が出てきた。本日はNISAについて考えてみよう。

(1)NISA枠の拡大論議

上記でも少し触れたが、先日、自民党の税制改革大綱でNISA拡充路線が表明された。現行の120万円×5年=600万円が、「成長投資枠」の名前で無期限かつ1200万円に拡大する見込みだ。これは嬉しい事。

<今月の日経新聞より>

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「資本所得倍増」ってイメージが湧かなかったけど、これは正しい政策なのか。

つみたて投資好きな人は、これで万々歳となるだろ。でも、私のように個別株投資を志向としている人にとっては、やっぱり譲渡損失の相殺ができない事はNISAの最大の欠点だ。この解消を強く希望する。これに想いが至らないのって、やっぱりNISAを擦親する政治家や官僚が預貯金と株式は同種だって発想があるためなのか。

以前の投稿で書いたので、そのまま引用したい。

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損失が発生したら譲渡損失として認識して欲しい事

NISA枠で購入した株式の配当所得も譲渡所得も5年間に限り非課税となる。ただ、想定外に株価が値下がりして大きく損失を被る可能性もある。通常の口座で買い付けていれば、譲渡損を他の譲渡益や配当所得と相殺できるが、NISA枠で購入した銘柄は損失相殺ができない。投資を促す立場で導入した制度なのに、そのままその損を被るだけでnettingできないのでは優遇制度と呼べない。

かつて1000万円の非課税購入枠があってその範囲内であれば非課税って制度があった。もう覚えていないけど、あの当時はこんな片手落ちな制度ではなかったんじゃないか。

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※参考

hassan01.hatenablog.com

 

(2)今年のNISA枠をどう使うか

2020年にも「今年のNISA枠をどう使うか」と言う記事を書いた。毎年12月になるとNISA枠で悩む。

と言うのも、過去のNISA枠の利用実績があまり良くないためだ。通算するとプラスだけど、個別株で勝負する人は負ける可能性がある。そうなるとその銘柄の譲渡損を他の銘柄の譲渡益とnettingする事もできないし、損がそのまま負担になってしまう。それが嫌でなかなかNISA枠を使っていいのものか悩んでしまうのだ。

あれこれ悩むのは精神的に良くないので普段は特定口座で買い付けて、12月に入ったらNISA枠で悩む習慣がここ数年続いている。

これまでNISAでは重厚長大銘柄の底値を拾う事が多かった。でも、底値と信じて買ったら底が抜けて二番底にズリ落ちて行ったり、遅々として上昇しないケースもある。

今年はちょっと路線を変えて国際優良株を買ってみた。これまでの路線から軌道修正を図ってみたいのが1つ。もう1つの理由は、自民党の税制改革大綱でNISA拡充路線が表明されて、その中に「成長投資枠」なるワードが入って来た点だ。確かに、個別株を買う以上は高配当株狙いだけでは面白くない。高成長こそ株価上昇を伴うもの。いや、急騰を期待したいではないか。

最初に候補として挙げたのはキーエンス。この銘柄は100株買うのに500万円超なのでNISAの限度額120万円に納まらない。と言うか、そもそも500万円は高すぎるのでアウトだ。株価が12000円以内に納まる会社から選ぶことにした。

今年のNISA枠を利用するなら明日12/27が最終取引日になるので、念の為。

 

(3)NISA改革のその先は

今回の方向性で決まれば、金融庁のNISAか厚生労働省iDeCoかって論点は終わるだろう。制度の意味合いは違えど、年齢や職種の制限などより緩いNISAがメジャーになる方向だ。

あと、つみたて分も含めて1800万円の非課税枠を設けた事で、将来的に譲渡益増税の足掛かりができたとみる事もできる。現行20%(所得税15%、住民税5%)を吊り上げていくリスクはないのだろうか。

コロナ禍の3年間で国は感染症治療費やワクチン費用を負担したし、補助金を大盤振舞いした。その総額は如何ほどなのかハッキリしていない。ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮の挑発を受けて、防衛費増額が見込まれその観点でも増税の方向性が示されている。

取りやすいところから税を徴収する点で、1800万円の非課税枠は免罪符になる惧れがあるのではないか、そんな懸念を感じる今年の年の瀬だ。

iDeCoのZoomセミナー(第3回)に出席してみた

本日は忘れた頃に書き足すiDeCoネタ。

以前、Zoomセミナー(第3回)に出席した。60才で戻って来ると思っていたら、いつの間にか受給開始が選択制になって65才までズルズル運用を続ける事になった。これは嬉しいんだか、それとも70才まで1億総活躍で働きなさいって尻を叩かれているのか微妙な所だ。

やっぱりEETで受給時に課税される可能性がある事は引っ掛かる。そこでは運用益とか元金(拠出金)の色はなくて、所得控除から溢れた部分が課税対象額になるって事。一時金であれば退職控除、年金受取であれば雑所得の控除を超過した部分だ。今は未だiDeCoで多額の一時金を得た人が少ないだろうけど、これは退職金をドカッと貰った人などで揉めそうな予感。

セミナー講師はどうやら「64才までなら公的年金の受給開始前なので、このタイミングで控除額をしっかり使える」と1つの案を提示してくれていた。

もちろん政府も「資産所得倍増」を謳うのであれば、この矛盾した状況について対応を考えて欲しい。そうした趣旨は以下の記事(2022年6月)にも書いてみた。DB(確定給付年金)だって同じじゃないかって見方もあるだろうが、DBには追加拠出制度はないので事前アナウンスは必要と思うのだ。

hassan01.hatenablog.com

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以下は上記セミナーとは別金融機関(出典は省略)のデータだが、2種類のグラフを見つけた。

1つは運用利回りに2つのコブができている事。これは日経新聞で以前チェックしたものと同じ傾向だった。相場が総じて上昇局面にあればこうした二極分化になるだろうし、暴落時であればマイナス10%辺りに大きなコブがシフトするケースもあり得る。

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もう1つが上のヤマ(運用上手)と下のヤマ(平均的)でそのPortfolioを紹介したもの。これは尤もな配分だ。トレンドもあるのだろうが、外国株式への配分が日本国内の2.5倍くらいになっているのが特徴だろう。f:id:hassan01:20221116192553p:image
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